突然魔法少女? 157
「え!今年は行かないの!アイシャ」
シャムの叫びがこだまする。それまでの能面のような無表情がすぐに笑顔に変わるアイシャ。
「そうよ、今年はね誠ちゃんと年越しに決まってるじゃない!」
「おい!何勝手なこと言ってるんだ!テメエが……」
そう言って再び詰め寄ろうとする要だが、アイシャは余裕のある態度で要を見据えている。
「そんなに怒ること無いでしょ?私も東和の普通の年越しって奴を体験したいだけなの。毎年コミケってのも飽きてきたし。それに……」
艶かしい顔で誠を見上げるアイシャ。身震いする誠、だがいつの間にか隣にはいつの間にかカウラまでやってきている。
「普通の年越しか。神前の家は剣道場だろ?なにかイベントは無いのか?」
カウラの言葉に一瞬アイシャに惹かれていた意識を引き戻された誠は頭を掻きながら考えてみた。
「そうですね……四年前までは道場で蕎麦とか餅つきとかやったんですが親父が学年主任になったんで最近は特にイベントらしいことは……」
誠の言葉に目を輝かせるカウラ。
「じゃあ、今年は三人多いからやりましょうよ」
「三人?」
アイシャの言葉に要が不思議そうな顔をする。そしてしばらくしてその言葉の意味に気づいた。
「アタシ等がこいつの家に?」
真っ赤な顔の要。だがまるで気にしていないようにアイシャは話を続ける。
「夏コミだって誠ちゃんの家が前線基地だったじゃないの。当然今度もそう。まあ私達はゆっくり、のんびり年越し。シャムちゃん達は忙しく年越し」
「いいもん!楽しんでくるから!」
そう言うとシャムはそのまま食堂の味噌汁のにおいに惹かれるようにカウンターに向かう。ニヤニヤ笑いながら吉田もついていった。
「まあそんなことだろうと思いましたよ」
呆れる誠。名案を提示して自慢げなアイシャ。要は相変わらず頬を赤らめながら誠をちらちらと見つめてくる。カウラは納得がいったというようにそのまま自分の席へと戻っていく。
「あのーもしかして俺等も?」
島田が立ち上がるのを見ると素早くアイシャが指差した。
「当然!貴方達はシャムちゃんの手伝い!上官命令!拒否は認めないわよ!」
こういうことにかける情熱は他の追随を許さないアイシャに言いつけられてしょげる島田と整備班員。
「俺は国に帰るからな」
ヨハンはそう言い切って島田の希望は潰えた。誠はただ苦笑いでアイシャがこれから誠の家でのイベント予定でも考え出すだろうと思いながら見つめていた。