突然魔法少女? 154
誠は首をかしげた。写真に写っているアイシャだがどうも不自然に見える。
身に着けているのが先ほどまで見ていた源平絵巻に登場する甲冑とは明らかに違う。茶色い漆のようなもので塗られて輝く兜には鹿の角のような飾りがあり、胴は丸く金属でできているように見えた。アイシャの顔には仮面のようなものがついて、そこから髭のようなものまで生えている。
「当世具足って言うんですって!本当は六文銭に赤備えで真田信繁をやろうとしたんだけど……」
「浮きすぎだな」
カウラの一言にうつむくアイシャ。確かにこのような甲冑を飾っている剣術道場もあることは知っていた。
「でも大丈夫か?カウラは動物と相性最悪だぞ。馬なんて……」
そう言ってタレ目で見上げる要。アイシャもそこまで言われるとただ首をひねるしかなかった。
「それに怪我をされたらな……一応仕事に支障があるのは勘弁して欲しいな」
「隊長!私のときは何も言わないで!」
アイシャが目を向けたので嵯峨が首をすくめる。
「お前は止めても行ったろ?しかも去年とはうちをめぐる状況がかなり違うんだ」
そう言い訳するとなんとかアイシャは納得する。
「つまり歩けば良いんだよ。いっそのことアタシの馬のくつわでも取るか?誠と一緒に」
ニヤニヤ笑う要だが、先ほどの嵯峨の言葉に少しばかり落胆していた。
「そうですね。今年も歩きますよ。甲冑はこの前ので良いです」
残念そうな口ぶりでそう言い切ったあと、要をにらみ返すカウラ。
「でもこれって誰が金だしてんだ?」
至極もっともなランの言葉に嵯峨が手を上げる。
「生産的な出費だろ?これで胡州の学者さん達は研究費用が稼げて技術の研鑽につながる。東和は伝統的な資料を見ることで歴史を学べて観光客も呼べる。俺は価値のある美術品を購入して資金の投資を行ったことになる。三方丸くおさまって良いことじゃねえの」
そう言うと嵯峨は立ち上がる。
「定時だぜ、どうする?飲みに行くか?」
嵯峨の言葉に頷くラン。
「叔父貴のおごりってわけじゃ……ねえよな」
「無茶言うなよ。俺はおととい競輪で負けてやばいんだから」
そう言って端末を閉じる嵯峨。
「じゃあ、クバルカ中佐と要とカウラ、私と誠ちゃん……」
アイシャが視線をパーラに向ける。パーラはそのままサラを見てサラは隣のリアナを見つめる。
「ごめんね。私今日は健一さんと……」
「じゃあパーラの車は……あと島田でも呼ぶか。たぶん吉田とシャムは行かねえだろうからな」
要のその一言で一同は動き始める。誠はいつものように今日こそは全裸にならないと心に誓った。