突然魔法少女? 147
「ふう、良いな。レベッカも胸以外に特技があるじゃねえか」
ようやく気が晴れたのか少し明るい調子で再び甘酒を含んだ要がため息をつく。酒豪と言う言葉では足りないほどの酒好きな要だと言うのに、なぜか頬が赤く染まっていた。
「なんか顔が赤いですよ?」
誠の言葉に要は机から足を下ろす。そして素早くコップを置くとひきつけられるように誠を見る。そして突然何かに気づいたように頭を掻いた。
「き、気のせいだ!気のせい」
そう言って慌てた要がつい甘酒のコップを振って中身を机にこぼした。
「大丈夫ですか!」
誠はハンカチを取り出して要の机に手を伸ばした。その手に要の手が触れる。
「うっ……」
大げさに飛びのく要。奇妙な彼女の行動に誠は違和感を感じていた。
「どうしたんですか?」
「うん……」
黙り込んでいた要だが、誠の目を見るとすぐに視線をそらしてしまう。
「ああ、ちょっとトイレ行ってくるわ。たぶんアイツ等が来るころには戻るから」
そう言うと早足で部屋を出て行った要。誠は要の半分ほど甘酒の残ったコップと取残された。
「ねえ……」
後ろから突然女の声がして飛び上がる誠。そこにはいつの間にかアイシャが立っている。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないの。それより要が今何しているか知りたい?」
明らかに悪いことを考えているときの表情のアイシャ。こういうときのアイシャの口車に乗って何度煮え湯を飲まされたかを思い出す誠。そしてアイシャの頭の中がエロゲで支配されていることも知っていた。
「遠慮します!」
「そう、でも要はきっと知ってほしいと……」
「なんでそうなるんですか!」
きっぱりそう言うと誠は自分の席に座りなおす。
「ふーん。本当にニブチンね。おかげで私は……」
にんまりと笑い口に手を添えるアイシャ。大体こういう時はろくな話をしないのを知っているので誠は避けるように自分の席から隣に立っているアイシャを見上げた。
「ニブチンで結構です!」
そう言うと目的も無く端末を起動させる誠。
「なにか気になることでもあるの?」
明らかに慌てている誠をからかうような調子で見つめるアイシャ。
「別に……」
「まあ、いいわ。それならその端末しまって頂戴。ラストの撮影の準備、要が戻ったらすぐできるようにしておきましょう。まあしばらくは戻ってこないと思うけど」
意味ありげに笑うとアイシャはそのまま部屋を出て行く。あっけに取られる誠も部屋の外を歩いているラン達の姿を見て端末を終了させた。