突然魔法少女? 145
「正直最後はやっつけで書いたのよね」
端末のコードを抜きながらのアイシャの言葉。アイシャに逆らうのは無駄だと諦めている吉田もすでに首のスロットのコードを抜いて機材の山に放り投げていた。
「おい、やっつけなのかよ。まったくストーリーができたのは俺のおかげなんだぜ」
吉田はそうこぼすとシャムから紙コップを受け取る。シャムは奥から鍋を持って出てきた技術部の西高志兵長と紙コップを持ったレベッカ・シンプソン中尉からさらに紙コップを受け取る。
「おう、甘酒か。レベッカが朝から何やってるのかと思えば……」
半ば呆れながらランがテーブルに置かれた大きな鍋の蓋を開ける。しろいどろどろの甘酒がかぐわしい香りをハンガー一杯に拡げた。
「そんなことを言うとあげませんよ」
レベッカはそう言いながらいつの間にか吉田の後ろに列を作っていた整備兵達に甘酒を振舞い始める。
「しかし、こうしてみるともう冬なんだな」
その列の中にいつの間にかいたカウラがエメラルドグリーンの髪に手をやる。
「なんだ?人造人間でも風雅ってもんが分かるんだ」
要の言葉にそれまで隣の甘酒を覗き見ながら機器を片付けていたアイシャが立ち上がる。
「ひどい偏見!私達も一応人間よ!取り消しなさいよ!」
顔を近づけてつばきを飛ばすアイシャに一歩もひかない要。すぐさまジャンプしたランが要の頭をはたいた。
「馬鹿やってんじゃねーよ。甘酒やらねーぞ」
そう言いながら保安隊副長特権で甘酒の列に割り込んで手にしたコップを傾けるラン。
「それより子供が酒飲むのは……」
「アタシは大人だ」
カウラの言葉を切り捨てるとランはそう言って甘酒を飲み干した。
「これ、おいしいですよ。要さん」
誠の一言になぜか機嫌を悪くした要は黙って実働部隊の詰め所のあるハンガー奥の階段に向かって歩き出した。
「素直じゃねーな。あいつも」
その様子を紙コップの中の甘酒で体を温めながら見守るラン。
「あの、じゃあ僕も遠慮します」
誠の言葉にレベッカに代わって甘酒を振舞っていたアイシャが目の色を変える。
「そんな、あいつのわがままに付き合う必要なんて無いわよ」
そう言うとアイシャは警備部のスキンヘッドの兵士から甘酒の入ったコップを奪って誠に持たせる。
「別にそんな……」
「いいから!持っていきなさいよ……これもね」
そう言うとアイシャはもう一杯の甘酒のコップを誠に持たせる。彼女の笑顔に背中を押されるようにして誠はそのまま要のあとをつけた。