突然魔法少女? 138
「どうやら休憩を取られているみたいですわね」
にこやかな表情で会議室に現れたのは遼州同盟司法局、法術特捜主席捜査官、嵯峨茜警視正だった。
「おお、茜。お前も食うか?」
「お父様。ワタクシはちゃんとお昼ご飯はいただきましたの」
そう言うと彼女は誠を見つめた。
「ちょっと神前曹長の提出した資料についてお話がありますの。よろしくて?」
茜の微笑みに父である嵯峨は何かを訴えたいと言うような視線を誠に送ってくる。
「おい!こいつの資料になんか文句でもあるのか?」
明らかに怒りを前面に出して茜に迫る要。それを軽く受け流すような微笑をたたえて茜は誠を見つめる。
「ああ、良いですよ。なにか……」
「よろしいみたいですわね。じゃあ要お姉さまと……」
「私も行こう」
茜の視線を見つけてカウラも立ち上がる。
「食べかけだよ!どうするの?」
「ナンバルゲニア中尉。それほどお時間は取らせませんわ。とりあえずラップでもかけておいて下さいな」
そう言うと立ち上がった誠と要、そしてカウラをつれて部屋を出る茜。
「本当にちょっと見ていただければ良いだけですの」
そう言うとそのまま仮住まいの法術特捜本部と手書きの札の出ている部屋へと入る。
「ああ、茜さん!」
部屋ではお茶を飲みながら端末の画面を覗き込んでいる捜査官補佐カルビナ・ラーナが座っていた。
「ラーナ。どうなの」
茜のそれまでの上品そうな言葉が急に鋭く棘のあるものに変わる。要はそれをニヤニヤと笑いながら見つめていた。
「やはり間違いないですね」
真剣な顔のラーナにそれまでふざけていた要の顔が一瞬で切り替わる。
「アタシも気づいていたけどやっぱりか」
「どういうことだ?」
カウラの言葉に要は画面を指差した。そこには奇妙な死体が映されていた。
「こんなのあったんですか?」
その白骨死体を見ても誠はいまひとつピントこなかった。そんな誠を呆れたような視線で見つめる茜とカウラ。
「しょうが無いじゃないか、こんなの珍しくも無い死体なん……?」
誠をかばおうとしていたカウラもその白骨死体の画像に引き込まれて黙り込んだ。
「模型じゃないですよね。これ」
自分が整理した資料だったが誠には覚えが無かった。だがその白骨死体はこうしてそれだけを目にするとその奇妙さがはっきりと分かるほどのものだった。