突然魔法少女? 137
「餌付け?何のこと?」
涼やかな印象がある美女、安城がとぼけたのが気に入らないと言うようにランは今度は春子を見つめた。
「ああ、これね。安城さんの差し入れ。他にもあるわよ」
そう言って奥に寄せてあったテーブルの上のどんぶりモノを指差す春子。
「やったー、じゃあカツどんある?」
「オメエさっきもとんかつ食べてたじゃねえか!」
要の忠告を無視してラップのかけてあるどんぶりを覗いて回るシャム。
「師匠!親子丼しかないですよ」
小夏はそう言って自分の分のどんぶりを確保する。シャムも仕方ないと言うように小夏から親子丼のどんぶりを受け取る。
「アタシは天丼で、神前は?」
要に声をかけられて誠は我に返った。
「じゃあ僕も親子丼で」
「残念!私が最後の親子丼を食べるのよ!」
アイシャは要が手を伸ばしたどんぶりを奪い取る。にらみつける要だが、アイシャは気にせずラップをはがすと口にくわえていた箸をどんぶりに突き刺す。
「テメエは餓鬼か!」
呆れながらアイシャを見ていた要だが、サラやパーラ、リアナ。そしていつの間にか来ていた島田と言った面々がどんぶりを取っていくのを見て仕方なく適当に一つのどんぶりを確保した。
「これで良いだろ?」
誠が受け取ったどんぶりは深川丼だった。
「ああ、僕は貝が大好物ですから!」
そう言って誠はうれしそうなふりをしてラップをはがす。
「嘘つくなよ、この前アサリ汁飲まなかった奴が……」
低い声で要がにらんでくるので静かに箸を置く誠。
「じゃあ、私のかき揚げ丼と交換するか?」
誠の後ろに立っていたカウラの言葉に誠は自分のどんぶりを差し出した。
「俺のは?」
吉田が窓際で叫ぶ。両手にどんぶりを持っていたシャムがちょこちょことかけていって吉田にどんぶりを差し出した。
「……安城にしては良い差し入れだな」
喜ぶ部下達を見て複雑な表情でランがつぶやく。誠はその様子を見てアイシャを見つめた。
アイシャはそのまま誠の袖を引き、入り口の嵯峨達から遠い場所で誠の耳に囁いた。
「あのね、安城さんもランちゃんも隊長に気があるのよ」
そう言われてみれば安城とランが微妙な距離を取っているのも、春子とばかり話す嵯峨を時々覗き見るのも納得できた。