突然魔法少女? 133
ランはそのまま力尽きたように倒れこもうとする。それを支えるシャム。
「ふっ。アタシが敵に情けをかけられるとはな……」
そう言うと手にした銀色に光る剣をそばに来た要に手渡す。
「アタシが生きて貴様達の手に渡れば、アタシを慕ってくれた『赤色の魔法国』の民は皆殺しにされる。これで止めを……」
「馬鹿!」
そう言うとシャムはランに平手をかました。明らかに驚いたような表情のランは瀕死の人物の顔色ではなかった。
「ランちゃんが死んだらその人達は永遠に機械帝国の奴隷なんだよ!間違っている世界、間違った力。生きているからその間違いを正せるんだよ!」
熱い手でランの剣を握る手を引っ張って自分の胸に当てるシャム。
「どう、私も生きてるでしょ。だからこうしてランちゃんに会えたの。だから機械帝国を相手に戦えるの。だから死ぬなんて……殺してくれなんて言わないでよ!」
そんなシャムを見て要は微笑むと剣をランに返した。
「そう言うわけだ。貴様に戦士の誇りがあるならこの剣を取れ。無いならもう一度機械帝国の黒太子カヌーバの前に行って殺してもらって来い」
要はランの視線を感じながら鞭を握り締めた。
「キャプテンシルバー、敵のアジトは分かるのか?」
殊勝に小夏が要を見上げる姿が誠には非常に新鮮に見えた。
「ああ、この先の廃鉱山の中に黒太子の秘密基地があるはずだ」
そう言うと歩き出そうとした要だが、地鳴りのようなものが採石場全体を覆った。
「なに!なんなの」
ランに治療魔術をかけていたシャムが当たりを見回す。採石場の不安定な石は崩れ落ち、森の中から動物達が先を争って逃げ出す。
「私も分からない。何が起こったと……!」
要の目の前には信じられない光景が広がっていた。
それは巨大な女性の像が廃鉱山のあった場所に立っていた。正確に言えば立っていたというよりも廃鉱山を壊して姿を現したという状況だった。
『へー、あの設定がこう生きてくるのか』
興味深げに誠はより機械的なキャラと言うことでアイシャに頼まれたデザインの巨大化した明華こと機械魔女メイリーンの姿を見つめた。
「これは最後の切り札だが、それを使わせた貴様等には敬意を表するぞ!」
巨大になった分良く響く声で明華が叫んだ。
「巨大化魔法を使うか……。あの魔法はを使えばゆくゆくは自滅するというのに」
そう言ってこぶしを握り締める要。
「自滅?」
小夏が要ことキャプテンシルバーを見上げる。
「ああ、我々機械魔女の体の構成を魔法で組み替えることで巨大化する術だ。だが、これを使えば元には戻れないだけではなく、そのまま魔術に飲み込まれ人格さえ破壊されることになる」
そう言った要の視線の先で意味も無く山を崩して暴れまわる明華。
『誠ちゃん出番よ!ここからの台本を表示するから』
アイシャが淡々とそう言うと画面の下に文字列が流れ始める。
『無茶ですよ!こんなのすぐ……』
『やってね!』
媚を売るようなアイシャの声に頭を抱えながら誠は自分の出番である場面へと画面を切り替えた。