突然魔法少女? 132
よたよたと採石場を歩くラン。その足取りは非常に重いものだった。
わき腹を押さえる左手が光っているのは治療魔法を使っているからのように見える。それでもぽたぽたと開いた傷口から血が流れ続ける。傷ついた身体では十分な魔力を発生させることが出来ないらしく誠もはらはらしながら見つめていた。
『でもやっぱり採石場か。ここはお約束だな』
自分の案の戦隊モノチックな展開に手に汗握る誠。ランの周りにはすぐに不気味な黒いタイツに骨をかたどるような扮装の手下が現れる。
『ちょっとー!アイシャさんベタ過ぎ!ちょっとベタスギ!』
そんな誠の声も届かずなぜか肉弾戦をランに挑む手下達。小さいとはいえランも教導隊の隊長をしていただけのことはあり、得意の剣を使うまでもなくあっという間に追い散らされる。
しかし、採石場を降りきったところでまた現れる手下。
「きりがないな。これがアタシの運命と言う奴か」
そう言いながら剣を抜くラン。全身に切り傷が増え、剣の切っ先も鈍ってくる。
「そこまでよ!」
突然の叫び声に手下達は採石場の反対側に目を向ける。
そこには二人の少女と一人の女性の姿があった。
「行くわよ!」
そう言うと石の上に立っていた三人が飛び降りる。
まずはシャム。瞬時にピンク色に画面が占められ、すぐに手にした杖のミニチュアが巨大化する。
「友情、愛、そして真実の為に!私は誓う!」
『あのー、また変身呪文が違うんですけど』
脳内で突っ込みを入れる誠の視界の中一杯に回転を始めたシャムの服がはじけとび、白と青の魔法少女のコスチュームが現れる。すぐに小夏の変身シーンに切り替わる画面。同じように今度はオレンジの光の中、くるくる回り黒とオレンジの魔法少女のコスチュームが小夏を包む。
『まさか……』
誠がそう思ったときは遅かった。
要のぴちぴちのレザースーツが黄色い光の中ではじけとび、魔法使いと言うより魔女と言うような胸をわずかに覆う金属製のブラジャーとぎりぎりのパンツ。そしてきらびやかな金色のマントを翻すキャプテンシルバーの姿が現れた。
『違うよ!シルバーじゃないよゴールドだよ!それ』
そんな誠の心の声を無視して三人がランを襲う手下の前に現れる。混乱して敵を認識できない手下。
「こいつ等の処理速度では私達の特定はできないはずだ!行くぞ!」
そう叫ぶ要が先頭を切って敵に切り込む。彼女の振るう鞭で次々と倒される手下達。小夏も手にした鎌で次々と手下を倒していく。予想したとおり、どう見ても銃器を使えば要達を倒せるだろうという状況なのにただひたすら白兵戦を仕掛けて吹き飛ばされる手下。
『やっぱり血を見るとまずいだろうからな』
そう安心してみていた誠の視界をピンク色の爆発が多い尽くす。
「ランちゃん!助けに来たよ!」
笑顔で爆発系の魔法を使って見せたシャム。
『あのー!それまずいと思うんですけど!完全にクバルカ中佐巻き込んでるように見えますけど!』
しかし、爆発の煙が収まると一人無事に爆発を避けるためにマントに隠れていたランの姿だけがあった。