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突然魔法少女? 125

「隊長!た・す・け・て・くださいー!」 

 泣きついて来るアイシャにしなだれかかられて鼻の下を伸ばす嵯峨だが、その視線の先に春子と小夏、そして要がいるのを見てアイシャを引き剥がした。

「なんだよ、そんなにひどい出来には見えなかったけどな。予定よりは」 

「見てたんですね!隊長!ひどいですよ!あれでしょ?隊長は胡州の高等予科時代に作家の友達がいたとか……」 

 アイシャの言葉に少し首をひねった後、要に困ったような顔を向ける嵯峨。

「いいじゃねえか。知恵ぐらい貸してやれよ」 

 ニヤニヤ笑いながらそう言う要を見つめてさらに困惑した表情になる嵯峨。

「ああ、一学のことか?あいつは作家と言うより歌人だぞ。あいつの小説は何度か読ませてもらったけど、韻文のセンスは有るけど散文的才能はあいつにはなかったからな」 

「インブン?サンブン?」 

 嵯峨の言葉にいつものように一人でパニックに陥っているシャム。その肩を叩いたカウラがシャムに寄り添うように立つ。

「韻文というのは詩だ。語彙のバリエーションや言葉の響きの美しさを求める文章だ。そして散文は小説や評論なんかだな。意味や内容、構築する技術が求められる」 

 そう言うカウラに分かったような分からないような表情で答えるシャム。誠はどちらかと言えばシャムは理解していないと踏んでいた。

「どっちでもいいけどよー。要するに隊長は多少は物語の良し悪しが分かるんだろ?じゃあなんで前もってこいつに教えてやんなかったんだよ」 

 嵯峨の後ろで腕組みをしながらランがそう言った。会議室の全員が嵯峨に視線を向ける。

「だってさあ、こいつがこう言うことに才能を開花させちゃったりしたら大変だろ?この前だって職業野球のドラフトに引っかかるかもしれないとか言う話も出てきたわけだし。うちにはこいつが必要だからな」 

 そう言って落ち込んでいるアイシャの肩を叩く嵯峨。

「あのー。私はこっちの分野は才能を開花させたいんですけど……」 

「安心しろ!そうなったら俺が全力で潰してやる。なあ、吉田!」 

 嵯峨は満面の笑みを浮かべて窓際でいくつも並べたモニターを眺めている吉田に目をやる。吉田はそれを察して了解したとでも言うように黙って手を上げた。

「ひどい!なんてひどいんでしょう!この上司は」 

 わざとらしくそう言うとアイシャは誠に向かって歩いてくる。

「ひどいと思わない?誠ちゃん。あの人鬼よ!」 

 そう叫ばれても誠は何もできずに愛想笑いを浮かべていた。そのままじりじりと近づいてきて軽くアイシャの胸が誠の手に当たる。ちらりと要が蹴りを入れるようなポーズをとるのをカウラが止めているのが見えた。

「大丈夫だよ。吉田がどうせいろいろいじるんだろ?何とか見れるような作品にはなると思うぞ。それじゃあ続きをはじめるんじゃないのか?」 

 そう言ってそのまま手前の空いていたカプセルに寝転がる嵯峨。

「そうね、吉田さん!お願いね!」 

 アイシャが叫んでみるが、相変わらずモニターから目を離さずに吉田が再び手を上げた。

「次は南條家のシーンだから!お姉さん、お願い」 

「はいはーい」 

 そう言うといつものような満面の笑みで嵯峨の隣のカプセルに身を横たえるリアナ。誠も出番があったのを思い出してまたカプセルの中に戻った。

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