突然魔法少女? 12
鳩尾を押さえてうずくまる誠を看病しようとするのはカウラだけだった。要は腹を抱えて笑い、アイシャはそのまま奥へと消えていく。
「しかし、傑作だぜあのガキ。ああいった格好すると本当にガキだな」
要の笑いはそう簡単には止まりそうに無い。そこにサラが現れた。
「ちょっと!誠君達。遊んでないで手伝ってよ!あなた達、入場整理の係でしょ?」
すぐさまきびすを返して音響用のコードを持って走り回る島田を追いかける。
「入場整理ってあれか?」
要は入り口にたむろした集団を思い出していた。
「あまり係わり合いには成りたくないな」
歯に衣着せないカウラの一言。誠も中身は彼等と大差ないのでとりあえず愛想笑いを浮かべて立ち上がった。
「大丈夫か?」
気遣うカウラを制してそのまま誠は歩き始めた。
今回の映画、『魔法戦隊マジカルシャム』の服飾およびメカ、怪獣のデザインをしたのは誠である。とりあえず観衆の期待がそれなりに高いと言うことも分かって、誠はやる気を見せるべくそのままロビーへとたどり着いた。
先頭の客は誠も何度かコミケで顔を合わせたことのある大手同人サークルの関係者だった。その前に立つアイシャと世間話をしている。
「ずいぶん来てるな。結構入るんだろ?この劇場って」
要はタバコを手にしてそのまま喫煙コーナーへと向かう。
「ええ、千人弱は入ると思いますよ」
その言葉に絶句してタバコを落としそうになる要。カウラはロビーに広がる独特な雰囲気にいつものように飲まれていた。要はそのまま足早に喫煙コーナーのついたての向こうに消えた。そんな光景を見ていた誠に近づいてきたのはキムとエダだった。
「それじゃあカウラさんと……要さん!は入り口でこの券を販売してください。それと神前はクレーム対策な」
そう言って笑うキム。
「無料じゃないのか?」
そう言って迫るカウラにキムは親指で客と談笑をしているアイシャを指差した。
「ああ、あの人が漫画研究会の活動資金にするんだそうですよ。それに確かに吉田少佐はきっちり画像処理の料金とか請求するとか言ってたし」
「俺がどうかしたって?」
劇場の扉からは顔中埃だらけの吉田が現れる。キムとエダは敬礼した後すばやく立ち去ってしまう。
「それにしても客よく集めたな。入場料は五百円か。高いのか安いのか……」
そう独り言を言うと吉田は再び劇場の中に消えていく。
「何しにきたんだ?」
要はタバコをすい終えて誠の隣で屈伸をしている。
「客の様子でも見に来たんだろ?じゃあ私達もいくぞ!」
こういう場所でも責任感を発揮するカウラはゆったりした歩き方でロビーへと歩き始めた。