突然魔法少女? 117
「分かりましたよ!でも今回だけですよ」
そう言うと誠はジャンバーを羽織る。目の前では、してやったりと顔をほころばせる島田がいた。
「まあ俺としてはお前のことは買ってるんだ。俺もパイロット志願だったから分かるが操縦技術の上達速度はやっぱりお前さんの方がずっと上だからな」
島田はそう言いながらロッカーからヘルメットの入った大きなかばんを取り出し、その後ろから手鏡を取り出すと髪の毛を整え始めた。
「あ、ありがとうございます」
「まあそれじゃ……」
立ち上がろうとした島田の首筋に外から手が伸びてきてそのまま入り口に引っ張られる。
「ほお、島田。後輩に飯をおごらせるとはずいぶん了見の狭い先輩じゃねえか……え?」
ぎりぎりと島田の首を締め付けながらそう言ったのは要だった。
「西園寺さん、ちょっと……首!」
「おう、神前。こいつとサラとアンの飯代はアタシが出すぜ。まあその分こうして……」
さらに締め上げる要の腕に島田がばたつく動きを弱め始めた。
「おい、西園寺。殺すなよ」
茶色いコートに長い明るい緑のポニーテールを光らせるカウラが笑顔で要にそう言った。
「た……た……」
「正人、自業自得よ」
思わずサラに助けを求めようとした島田だが、サラもまたこの状況で要を説得できるなどとは思ってはいない。
「ちょっと!死んじゃいますよ!やめてくださいよ!顔が青くなって来ましたよ!」
誠の言葉を聞いて初めて要は手を離した。そのまま四つんばいになって咳き込む島田。
「大丈夫?正人」
そう言って駆け寄るサラだが、本気で心配しているような様子は無い。
「じゃあいいわ。アタシのおごりだ!吐くまで飲めよ!」
そう言って女子更衣室に消えていく要。続いて入ろうとするアイシャを誠は呼び止めた。
「どういう話し合いをしたんですか!また二日酔いで出勤は嫌ですよ!」
真剣な顔でそう言う誠だが、アイシャはそれに楽しそうに笑みを浮かべただけで彼の手を振り切って更衣室に消える。
「まあ、残念としか言えないな。とりあえず胃薬を用意しておいたが……飲むか?」
コートのポケットから錠剤の胃薬の入ったビンを取り出すカウラ。彼女がこういうものを必要としない自制心のある女性だとは知っていたので、それが自分に飲ませるために買ったものだと言うことは誠にも分かった。
「とりあえず後で頂きます」
「いや、これは食前に飲むのが良いらしいぞ」
そう言って少し笑みを浮かべながら錠剤の蓋を開けるカウラ。そのまま彼女から三錠の胃薬を受け取るとそのまま誠は一息にその錠剤を飲み下した。