突然魔法少女? 112
「シャム!どいて!」
叫び声と共に火炎がシャムとランを襲う。二人は飛びのいてその技が繰り出された上空を見上げた。そこには青い魔法少女のドレスをまとった小夏が手に魔法の鎌を身構えていた。
「お姉ちゃんだめ!これは私とランちゃんの戦いなの!」
そう叫ぶとシャムは杖を構えてランを見つめた。
「そう言うこった!貴様の命はアタシがもらう!」
一瞬で距離をつめるラン。だがすでにそこにはシャムの姿は無かった。
「なに!」
驚愕するランだが、背中を杖で殴られて吹き飛ばされそのまま隣の神社まで吹き飛ばされた。何とか体勢を立て直すと、その鋭い印象を見るものに与える目を剥いた。そして杖をかざして何かを詠唱しているシャムに剣を向ける。
「そうでなきゃつまらねーな。見せてみろよ!テメーの本気を!」
完全にノリノリで剣を振るってシャムに襲い掛かるラン。だがすぐさま三つに増えたシャムに包囲される形となる。
「なんだ?なんなんだ?」
焦って周りのシャム達を見回すラン。だが、すぐに下から発せられた稲妻に巻き込まれて吹き飛ばされる。
「下ががら空きだよ!ランちゃん」
そう言ってそのまま空中で体勢を崩したままのランに杖を振り上げるシャム。
「そーはいかねーよ!」
ランは上半身だけでシャムの一撃を受け止めると、そのまま後退して距離を稼ごうとする。シャムは再び距離をつめようとするが、動物的勘の持ち主と言えども飛ぶことに慣れていないシャムにランを捕らえることは難しかった。直線的飛行と直角の変化ではランの流れるような軌道には着いていけなくなり、じりじりと間合いを広げられる。
「それじゃあ!」
そう言ってシャムを援護するために魔法を使おうとするグリン。だが、その前には先ほど喫茶店で別れた要、この物語の名前で言えばイッサー大尉が立ちはだかった。機械的な上半身から炎のような魔力をたぎらせる要ににらまれてもグリンはひるまなかった。
「邪魔だよ!キャプテン・イッサー!」
『キャプテン・イッサー……語呂合わせ?それとも思いつき?』
誠は時々見せるアイシャのすさまじいネーミングセンスに口を開けたままこの画面を見つめていた。
「おい、これは女と女の信念をかけた戦いなんだ。野暮なことはよしにしようや!」
再びわけのわからないベクトルでの自己陶酔モードに入った要がやけに良い笑顔でグリンを見つめる。
「そうだよ!これはアタシとランちゃんの戦い!誰にも邪魔はさせないよ!」
そう言うとシャムはランに一直線に飛んでいく。
「なるほど!アタシに本気を出させたいわけだな!」
ランもまた力の限り自分の身長を超える剣を振りかざす。二人の得物が激突し、強烈な光があたりを覆った。
「なに?なにが起きたの!」
上空でまぶしさに目をつぶってしまう小夏。
「シャム!」
思わず叫んでいるグリン。そして強力そうなこぶしを握り締めて笑みを浮かべる要。
三人に見守られる中、強烈な光がいくつもの稲妻で当たりを染めながら次第に薄くなっていく様子が見て取れた。