突然魔法少女? 109
「皆さん!算数の宿題はやってきましたか!」
「はーい!」
元気な小学生達。中央の目立つ席についているシャムも元気に答える。
『あの、ナンバルゲニア中尉!はまりすぎ!』
完全に小学生になりきっているシャムに誠は苦笑いを浮かべた。
「そう!みんな元気にお返事できましたね!じゃあ早速これから書く問題をやってもらうわね」
そう言ってアイシャは相変わらずなよなよしながら黒板にチョークで数式を書き始めた。
『いまどき黒板は無いだろ!僕の小学校も磁力式モニターだったぞ!』
突っ込みたい衝動に駆られる自分を抑えて誠はアイシャの後姿を眺める。
『おい、神前』
出番の無い要が呼びかけてくる。
『東和ってまだ黒板使ってるのか?』
『そんなわけ無いじゃないですか!アイシャさんの暴走ですよこれは』
『ふーん』
納得したようにそう言うと黙り込む要。10問の数式を書き終えたアイシャは満面の笑みで振り向く。
「じゃあ、この問題を誰にやってもらおうかしら?」
アイシャがこう言うと一斉に手を上げる子供達。だが、シャムは身を縮めてじっとしている。
「あら?シャムちゃんどうしたのかしら?」
ポロリとアイシャがそう言うと周りの生徒達がシャムに目を向ける。
「あ!こいつ計算苦手だからな!」
「そうだよ!南條は算数できないからな!」
二人の男の子がそう言って笑う。それを見て怒ったように頬を膨らませたシャムが手を上げる。
「そんなこと無いよ!先生!私を指名してください!」
勢いよく立ち上がるシャムにアイシャは困ったような顔をした。
「良いの?本当に」
「大丈夫です!」
そう言うとシャムはそのまま黒板に向かう。背の小さい彼女は見上げるようにして一番最初の数式を見つめた。そしてゆっくりと深呼吸をする。
『あれくらいは解けるだろ?一応あいつは高校出てるんだから』
『そうですね』
要の言葉に誠も余裕を持ってシャムの方を眺めた。いわゆる鶴亀算の書かれた黒板の文字を凝視するシャム。彼女はゆっくりとチョークを手に持った。
『まさかな……分からないとか言わねえよな……』
シャムの動きが止まったのを見て要の口が重くなる。
しばらく経つ。そしてチョークを手にした腕を持ち上げる。
『大丈夫なんだろうな。あいつが小学生並みなのは良いが小学生以下ってことになると問題だぞ』
さすがに要も保安隊のエースとして知られるシャムが小学校5年生の算数の問題ができないと言うことになれば良い恥さらしになると言うことに気づいた。
シャムは一瞬だけ黒板に触れたがすぐに手を引っ込めた。
『おい!』
その姿に誠と要は同時に突っ込みを入れていた。