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くれないの影  作者: しのぶもじずり
第四章 ないしょ話は牛車の中で
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かくして、二人を乗せた牛車は、檜笠ひのきがさを被る痩せた牛飼いに引かれて、南東の国司館に向けて ゴトゴトと出発した。

鳥座惣右衛門、達磨坂栗右衛門、平題箭謙介と喜谷部伊織が馬で後ろに付く。


「気持ちいいお天気だね。

ねえ、綺羅君は本当に調べているのかなあ。

ちっともそうは見えないんだけど」


牛車の中は二人きりだ。

周りを気にすることなく話ができる。

さっそく、鹿の子は気になっていることを訊いてみた。


「千種という人のことが分かったようだよ」

「すごい。悪いけど、本当にできるとは思ってなかった。どんなことが分かったの」

「親戚ということになっているが、先代様が外に作った娘らしい。

奥方様が亡くなり、相次いで千種の母親も亡くなった時に、屋敷に引き取ったようだ。

紅王丸が幽閉されてからは、一人で世話をしていたらしい。

ちなみに今は、五葉という侍女が食事を運んでいる」


「へえ、誰から聞いたんだろ」

「先ごろくびになった、飯炊きのばあさんから聞き出したらしい」

 

それを聞いた鹿の子は、自分が馘にしたことをうっすらと思い出した。

しかし、あれは綺羅君のせいだ。

よくも図々しく聞き出せたものだ。どうやったんだろう。


「千種さんは、何故おかしくなっちゃったの?」

「そこまでは分からない。

だが、千種が亡くなる半年ほど前に、白菊が怪我をして臥せっていた時期があるというから、火傷をしたなら、その時だろう。

それ以後、御簾で隠すようになっている。

千種も、その頃から人前に出なくなったそうだ。

屋敷を出たのではないかという話もあったらしい」


「ちゃんと調べてる。関心関心。肝心の紅王丸様のことは?」

鹿の子にとって大事なのはそこだ。


「元飯炊きばあさんは、土蔵に閉じ込めたのは千種だと思っているようだ。

幽閉されてからの紅王丸君の事は、千種が一切を取り仕切って、他の人間の目には触れなくなった。

そこから推量したのだろうが、確かなことは分からない。

調査中だそうだ」


「……ふうん。あたしは孤児だから分かんないけど、腹違いでも弟だよねえ。

閉じ込めたりするかなあ。だって心の病でもなんでもないんだよ」

白菊として人前に出るようになってから、紅王丸に会いに行くことが難しくなってしまった。

会いたかった。綱渡りも見せたかった。


「特別な恨みでもあれば、有り得ん話でもない」

「綺羅君様に調べられるんだろうか」

鹿の子は、綺羅君がどこまで役に立つのか、信用しきれていない。


人間は、日ごろの行いが大切だ。



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