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覚悟はできております

作者:

これは私に定められた宿命。


だから覚悟を決めました。




******



「なぜ、お嬢様が……」

侍女のサリが今にも泣きそうな表情を浮かべる。

「これが私の『宿命』です。サリ、全てが終わったらこれをお父様に渡して」

一通の手紙と鍵がついた宝石箱をサリに渡す。

「今までありがとう。巫女様をよろしくね」

囁く様にサリの耳元で告げ、眠りの魔法をかける。

床に倒れ込んだサリを浮遊魔法でベッドまで運んだあと、私は部屋を後にした。



******



「さあ、始めましょう。国王陛下」

私は神殿に設置された祭壇の前に座り、困惑している国王に告げる。

「私を生贄にして、この国を救ってくださる巫女を召してください」

「しかし、アルディア。王女であるそなたが生贄にならなくても…」

「いいえ、陛下。現在、王族で未婚の女性は私一人。私しかいないのです。『召喚の儀』は未婚の女性王族の生贄が必須であることはご存知ですよね」

国王の……父の言葉を遮り、私は周りに配置されている魔導士と神官に微笑む。

「さあ、始めてください。この国を救う巫女を召喚する儀式を!」

私の声に『召喚の儀』に参列している貴族達から戸惑いの声が上がる。


「なにを躊躇っているのです。私一人の命で多くの国民が助かる道が開けるのです。私に王族として最期の務めを果たさせてください」

私の言葉に陛下が小さく頷くと、魔道士たちが召喚の呪文を唱え始めた。

私はその声を聴きながらゆっくりと目を閉じる。


瞳を閉じる時、神殿の入り口から駆けてくる人たちの姿が見えた。

閉じかけた瞳を開き、彼らを見つめる。

彼らは必死に私に手を伸ばし何かを叫んでいる。


私はにっこりと笑みを浮かべ


「どうか、しあわせに」


そう告げ、再び目を閉じた。


私が目を閉じた瞬間、部屋は真っ白な光が包まれた。

光が消えた時、私の代わりに国を救う『巫女』が立っているはず。


『巫女様。どうか、彼らをしあわせにしてくださいね』


光の中ですれ違った少女に微笑むと彼女は小さく頷いたように見えた。


薄れゆく記憶の中で私は願った。


「どうか……しあわせに……」















******


「…………アルディア。そんなに婚約者候補(あいつら)の相手するの嫌だったのか?」

『召喚の儀』から数か月後。

私は別大陸で暮らしているとある方の屋敷でお世話になっている。

昔、私の国を訪れて、『異世界の巫女』のことなどを予言した人がいる。

その時、私の未来も予言した。


「当たり前じゃないの。だれが好き好んであんな変態男達の誰かと結婚しなきゃいけないのよ!」

「だからって、天災を利用して国を巻き込んで逃げるか?普通…」

「天災による被害は予言を元に試行錯誤して最小限に抑えているわよ。ただ、私の幸せの為に『異世界からの巫女』は必須だから無理やりこじつけて『召喚の儀』を行ったのよ」

「は?」

「本来『召喚の儀』には生贄なんていらないんだけど、私に告げられた予言を知っている老神官たちと結託して生贄必須ということにしたのよ。そうすれば、誰もが納得するって分かっていたから……」

「おまえ……」

「それに、その方が『異世界の巫女様』にも都合いいのよ」

「は?」

「彼等は『異世界の巫女様』がどうにかしてくれるから大丈夫よ。だってこの世界は『異世界の巫女様』の為のモノなんですもの」

「ああ、『ゲームの世界』ってやつか」

「そうよ。あなたのお父様が教えてくれたんじゃない。ライバル(わたくし)があの国にいない方が『巫女様』はあの変態男たちを虜にしてスムーズに国を再生できる(逆ハーレムを築きながら国を導く)って」

「アルディアの代わりに悪役(ライバル)になる人が出てくるってことは考えなかったのか?」

「大丈夫よ!しっかりと巫女様と彼らの邪魔をしてはダメだって通達済みだもの。お父様にも置き手紙で報告してあるし」

ふふっと笑う私。

「なるほどね…すでに裏で手をまわしていたってことか。お前を敵に回さなくてよかったよ」

「それは褒め言葉ですの?」

「当然!俺は世界で一番素敵な嫁さんを手に入れることが出来るってことだからな」





国の平穏のためにといろいろなモノを犠牲にしてきた姫。

将来、『異世界の巫女』に心奪われた婚約者候補達に殺されると言う予言をされ泣いていた小さな姫。

「どうすれば、私は幸せになれますの?」

庭園の片隅で一人泣いていた小さな姫の頭を優しく撫でるのは残酷な予言をした預言者の息子であり、隣の大陸を統べる大国の王子。

「僕の所に逃げて来れれば大丈夫だよ」

「貴方のところ?」

「異世界の巫女様にすべてを託して(婚約者候補達を押し付けて)僕のところに逃げておいで。そうすれば、君は誰よりも幸せになれるよ」

小さな預言者の言葉通り、逃げてきた姫は大勢の子供や孫に囲まれ天寿を全うするまで幸せに暮らしましたとさ。



お読みいただきありがとうございました。

簡単な裏設定を…(←作品に活かせよ)


【補足】

アルディア

 とある小国の王女

 小さい頃に「どんなに国の為に努力しても『異世界の巫女』によって殺される」という予言を受ける

 その後、預言者の息子に密かに協力してもらい生きながらえる方法を探す

 婚約者候補とは距離を取り、深く関わらないようにしてきた。

 『異世界の巫女』がくる直前に『召喚の儀』の生贄となり逃亡

 預言者の息子の元に逃げ込み、身分も名前も変えて生涯幸せに暮らす。


預言者の息子 イディアス・ソル・ファルシーク

 アルディアの祖国とは海を隔てた隣国

 大陸一の大国の王子

 預言者は彼の父親(つまり国王)

 父親同様に予言の力があるが父親以外知らない

 父親にくっついてアルディアの国を訪れた時に出会ったアルディアに一目惚れ

 父の告げた予言を逆手にとってアルディアを手に入れる計画を何年もかけて遂行していた。


預言者 マティアス・ルネ・ファルシーク

 ファルシーク国の王にして預言者

 『前世』の記憶もちで、この世界が『ゲームの世界』であることを唯一知る者

 『前世』でアルディアの事が気に入っていた為、『予言』という形で未来を変えることにした

 お気に入りのアルディアを息子の嫁にできて一番喜んでいる人


アルディアの婚約者達

 イディアスによる妨害もあり、アルディアにアプローチするも、避けられる 

 それぞれ変わった趣味を持っていて、アルディアに嫌悪されていた。



4/29一部ご指摘があった部分を訂正しました。

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