故郷とは母のカレーを食べられる場所である
読者様を増やすための試みとして、効果があるかどうかはわかりませんが、今回から前書き・後書きを書きたいと思います。
PV数もユニークユーザー数も自分が想像していたよりはあるのですが、(ゼロだろうと思ってたんですけど「なろう」すごいですねー、初投稿でもアクセスがあるなんて)本当に読んでくださっている方がいらっしゃるのか半信半疑です。
以下ネタバレ?
さて、第七話ですが、ぶっちゃけ微妙に暗いと思います。
百合香がいろいろ思い悩みます。ホームシックってやつです。
なるべくソフトに書いたつもりですが、読んでて嫌になっちゃったらごめんなさい。
次回はコメディ色の強い話にしようと思っているので、読んでくださっている方どうか見捨てないで下さい!!!(必死)
先生が帰りの馬車でも本を読もうとしたので、私は本を取り上げた。先生は不満を訴えたが、「でも先生酔うじゃないですか」と言うと黙った。本を取り上げられた腹いせのつもりか、先生は屋敷の怪談話を始めた。
「メイドのメアリに聞いたんだが、かつて子供部屋として使われていた部屋の床にある染みが、拭き取れば簡単に消えるのに次の日にはなぜか元に戻っているんだと。やばい幽霊が取り憑いてるんだと思う」
「掃除しても掃除しても汚す人がいるんでしょう。誰とは言いませんが」
たぶんその部屋というのは先生がゴロゴロしながら本を読んでいたあの部屋だろう。聞くまでもない。
「これはロデスから聞いた話なんだが、図書室の本が、いつ数えても目録より一冊少ないらしい。」
「読んだ後に戻さない人がいるんでしょう。誰とは言いませんが」
足りないのが一冊で済んでいることに逆に驚いた。
「最後は俺が体験したとっておきの話なんだが、遊戯室のビリヤードの球が、片付けても片付けてもいつの間にかまた転がっている。幽霊の仕業としか思えない」
「使った後散らかしっぱなしにする人がいるんでしょう。誰とは言いませんが」
その話のどこが他に比べてとっておきだというのだ。もし仮に本当に幽霊の仕業だったとしても、ビリヤードの球を散らかすだけの幽霊など何も怖くないではないか。
先生の怪談話は終始こんな感じで、ちっとも恐怖を感じられなかったが、先生が片付けができず使用人の皆さんが苦労していることだけは分かった。だらしない主人がいるというのは大変である。
馬車が屋敷に戻る頃には日も暮れ、私は目まぐるしい環境の変化に疲れ切っていた。昼間はあれほど優美に見えた屋敷は、夜になると不気味でおどろおどろしく、たしかに幽霊屋敷のようだった。
宛てがわれた部屋でようやく一人になれた私は、私の部屋のものの二倍はあろうかという広いベッドに倒れ込んだ。
眩暈がしそうだ。
あまりに重大なことが、この身に降り掛かってきた。
些細な行動から異世界に飛ばされ――たった一日探しただけとはいえ、帰る方法は見つかる気配さえない。
地球とは大きく違う世界観。
人に一瞬で新しい言葉を覚えさせるほど強力な、魔法という存在。
その全てが、どこか恐ろしい。
しかし何よりも恐ろしいのは、それらに戸惑いながらも案外すんなりと受け入れている自分で。
ああ、それに、見ず知らずの男をこうも簡単に信用して良かったのだろうか?
流されて秘書になる約束までしてしまったが、軽率だったのではないか?
あの男――先生は、悪人には見えない。
けれども古今東西、悪人というのは最も悪人らしくない顔をしているもので。
あの男に悪意やよこしまな心がないと、どうして言える?
私はあの男のことを何一つ知らないのに。
――地球に、帰りたい。
あの狭い田舎町の、地味な高校生に戻りたい。
両親はきっとすごく心配している。
副生徒会長としての仕事がたくさんあったのに。
全校朝会は、つつがなく進んだだろうか。
ああ、考えてみればそんな事はありえない。
今こうしてここにいることが夢でないならば、私は月森くんの目の前で消え失せたのだ。
あの田舎町のことだ、今頃大事になっているかもしれない。
月森くんがせっかく全校朝会のために考えた原稿は、お蔵入りとなったことだろう。
ひょっとしたら月森くんは、失踪事件の容疑者にされてしまっているかも知れない。
だとしたら、疑いを晴らさなければ。
ああ、でも、どうやって?
いろんなことが思い出され、私は少し泣いた。
あの時の私は、これ以上ないほど混乱していた。
母の作ったカレーが、何となく恋しかった。
「お食事の用意が出来ました」
メイドの女性が呼んだが、私は「今日はいりません」と答えた。どうせ母のカレーは出てこないのだ。
話の流れ上仕方のないことではありますが、暗くなってしまって申し訳ありません。
でもご安心ください、次回はきっと明るい話!
どこかお堅い雰囲気の漂う百合香ですが、なんと殿方とデートしやがります。
なお、デートのお相手を予想してからお読み頂けると楽しいかと存じます。
ちなみに今までの話で登場している殿方は、
①先生→社会性ゼロなギーク系男子でバカ、お色家むんむんな女を見ると蕁麻疹が出るピュアな一面も。ただし金と権力、そして実力は一番か?
②ジュン→隠しても滲み出る(べつに隠してないけど)イケメンリア充臭。おそらく経験豊富で、女子のいないとこでは「魔導師はモテる」とか言ってそう。
③ロデスさん→ロマンスグレーのオジサマ執事、しかしながらやっかいなご主人様付きの訳あり物件。
④月森くん→人の上に立つために生まれた男、末はきっと政治家だが変な女に引っ掛かりそうでもある。
⑤ペーター→一人称おいらの純朴少年、女の子には振られてばかりで失恋経験豊富な男子。
⑥オーソンさん→ジレア・ミナスに来たばっかりのときベンチに座らせジュンを呼んだ羆系男子(説明的)。多分親切(適当)。
まあ明らかに「こいつはねーよ」な人が数名いるような気もしますが、気のせいです、ええ。
長くなりましたね、では次回も前書き・後書きでお会いしましょう。