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第五夜

 第五夜、更新しました♪

 今回は、きっとまあさんに怒られる……。

 タオルで頭を拭きながら、バスルームから金髪の少女が出てくる。

 全身はスッキリとした締まりと女性らしい曲線で構成されており、その柔肌は吸い着きそうな柔らかさを醸し出している。

 その身体を覆うのは、たった一枚の、男物のワイシャツ。

 大胆にも前を閉じていない。

 元々裸一貫で拾われた手前、ブラもショーツも無く、白い肌が瑞々しい。

 首筋から流れる、透明な水玉が鎖骨の間をすべり、白い双丘の麓を走る。

 次いで、なだらかな起伏を越え、スッキリとした平野を、中央のすり鉢へ向かい、その弧に沿って転がりながら、柔らかな曲面の坂道を下っていく。

 そして、その先にある茂みの中へと吸い込まれていった。

 湿った髪の水分をとりながら歩く少女、クリスティーナ=ウエストロードは、先に上がっていた少年、黒須伐に声をかける。

「そういえばさ、伐」

「んぁ?」

 ズボンを履いただけで、塗れた頭にタオルをかぶりながらソファーにもたれ掛かって煙草を吸っていた伐は、気だるそうに応じる。

「伐って学生?」

 訊ねられた言葉に、軽く頭を上げて少女を見やる。

 視線を感じたクリスは、その意味するところに思い当たり、苦笑いする。

「ああ、違う違う、学校行けとかそういう話じゃなくてね」

「じゃあなんだ」

 そう聞き返しながら、彼女を胡乱げに見やる。

 しかし、少女は気にした風でもなく伐に近づくと、彼の身体を跨いで膝立ちになる。

 両の手の指で、ワイシャツの端をつまみ上げ、白い肌が露わになる。

 健康的に引き締まりながらも、女性らしい曲線と柔らかさを兼ね備えた腰回りを、雄猫の前に曝け出しながら、艶然と微笑む。

「このワイシャツって、央華学園指定のヤツでしょ? だからそうかなあって」

 少女のコケティッシュさと女の妖艶さが綯い交ぜになったかのような笑み。

「……アホな挑発してんな、このバカ」

「酷っ!」

 心底呆れたような声で言われ、クリスはフルスイングしたバットで弾き飛ばされたような顔になり、がっくりうなだれる。

「……三組だ」

「え?」

 聞こえた声に顔を上げるクリス。

 しかし、伐は素知らぬ顔で天井を見上げている。

 しかしクリスは嬉しそうに破顔し、伐の首に飛びついた。

「おい、危ないだろう」

 突然のクリスの行動に、あわてて煙草を口から離して高く掲げる。

「ふふ、伐ってば、優しいんだ♪ ん〜」

 嬉しそうに言いながら、はにかむクリス。

 そして少年の首筋に、唇を吸い着かせ、御楔を刻む。

「……目立つからやめろ」

「イ☆ヤ」

 明るく拒絶しながら楔を増やしていくクリス。

 その下半身が伐の太股に押し当てられ、少しずつ動き始める。

 無言になり、ふたつ白い柔玉も、彼の胸板に押しつけ、刺激を増していく。

「ハアハアハアハア」

 息が荒くなり、涎を垂らしながら男の首筋にしゃぶりつく。

 雌の匂いを発ちのぼらせ、明らかに様子がおかしくなり始めたクリスを冷めたように見つめる伐。

 無理矢理顔を引き剥がし、その目を覗き込む。

 理性も知性もない、とろけきった痴呆のような顔。

 眼は虚ろで、だらしなく口が開かれ、涎が垂れている。

 先ほどまでの、魅力的な少女の顔は、欠片も残っていない。


     ッ!


 それは、とても小さく、しかし、はっきりとした、何かが擦れる音。

 ふと、瞳の奥に、泣き叫ぶ少女の姿が見えた気がした。

 そのまま伐は、彼女の口を己の口で塞ぎながら、その身体を組み敷いていった。




 どれだけ経ったのか。

 暗い室内で、ノラ猫が目を覚ます。

 求められるまま彼女を抱き続け、何度も何度も少女は昇り詰めた。

 そこに愛は無く、ただただ行為があるだけ。

 最後に糸が切れた人形のようになった彼女を抱きしめて、己の意識を落としたはずだった。

 その柔らかい身体が己の腕の内に無い。

 闇に慣れた瞳で周囲を見回すと、部屋の隅に小さな塊があるのに気づいた。

 若干の疲労を感じながらも、足音一つたてず、淀み無い足取りでソレに近づく。

「……おい」

 掛けられた声に、塊が小さく跳ねる。

 しかし、伐はそれ以上声をかけない。

「…………」

「…………ごめん、伐」

 無言の伐に、クリスがぽつりと謝罪漏らす。

「……なにがだ」

「……私、頭がおかしくなってるの。男の人が欲しくて欲しくてたまらなくなるの。そして、頭の中が気持ち良いで埋め尽くされて、セックスしか考えられなくなっていくの……」

「…………」

「身体がいきなり燃え上がるようになって、ついで頭の中が白一色になっていく……ごめんね、伐。こんなスクラップみたいな私で……ごめんね、ごめんね」

 自分を責め、謝り続けるクリス。

 伐は、しばらくそれを聞いていたが、おもむろに脱ぎ捨ててあったズボンを拾うと、煙草とライターを取り出し、火をつける。

 軽く吸い込み、細く長く、紫煙を吐き出す。

「……あんたを拾った日な。店に来た、特別な客を相手してたんだ。五十過ぎたババアだ。俺みたいな容姿の整った若い男を侍らせて悦に浸ったりしてるような屈折した変態ババアだ。たまに相手をさせられたりするが、ありゃあ最悪だ。肌は張りが無えし、あそこはクセエ。おまけにマグロで、締めやしねえ。しかもあの日は、出張中の旦那がいきなり帰ってくるとかで、半分も払わずに帰りやがった。最悪の客だ。これだったら普通に店に出てた方がマシな稼ぎになってた位だ。そんなんに比べりゃあ、あんたは顔も良いし、身体も最高だ。テクもあって言うこと無しだ」

 伐は、いつになく饒舌になっていた。

 そんな彼を、クリスは、ぽか〜んと見上げている。

「……もしかして伐、慰めてくれてるの?」

「……………………」

 クリスの言葉に、憮然と黙り込む伐。

「ぷ。ふふふ」

「くっそ、慣れねえ事しちまったぜ……」

 笑い始めたクリスに、不貞腐れる。

「ふふ、ありがとう伐」

 微笑みながら礼を言うクリス。

 伐はその顔に、輝くものを感じて眼を細めた。

 第五夜、いかがでしたか?

「こんなん伐じゃない!」と憤られる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご容赦くださいませ。

 ではまた。

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