第参夜
第参夜、更新しました。
よろしくお願いします♪
「やれやれ、あんたからの呼び出しだなんて、何事かと思ったよ……」
そう言って、若い男は嘆息する。
「知るか。で、どうなんだ?」
男の様子に鼻を鳴らしながら答えるのは、‘路地裏のノラ猫’、黒須伐。
先を促す伐に、男は肩をすくめる。
「簡易検査キットなんかで解ることなんてたかが知れてるよ。ま、質の悪い悪酔いみたいなもんだな」
「……だから?」
苛つくような声。その事に、男は目を丸くする。
「……珍しい事もあるもんだ。ノラ猫が他人のために声を荒げ……冗談だ。睨まないでくれ、間違えて猫の目の前に躍り出たネズミの気分だ」
「なら、不用意なことを言わないことだな」
抜き身の短刀のような視線に、男はノドを鳴らしてしまう。
しかし、伐は気にした風でもなく布団に横たえられた少女へ視線を落とす。
男は、とりあえず許されたらしいことに安堵を覚えてから口を開く。
「恐らくだがいくつかのドラッグをカクテルしてるな。キチンとした病院で検査して入院を奨めるよ」
「それが出来るならてめえみたいなモグリを呼ぶか」
「……ごもっとも」
伐の言葉に肩をすくめる。が、すぐに顔を引き締める。
「なら、一度家に連れていっても良いかな? 大きい病院ほどじゃないが検査も出来るし、薬も処方できる」
その言葉に伐の目がうろんげになる。
「……食うなよ?」
「とんでもないっ!? 知ってるだろう? 僕の守備範囲は十歳以下だ」
そう言って胸を張る、ロリペド元小児科医の姿に、伐は長嘆息した。
「結論から言おう、使用されたのは約十数種類。向精神剤からなにから、精神やホルモンバランスなんかに働きかけて発情させる、まあいわゆる媚薬だが、組み合わせが良くない」
「どういうことだ?」
「言ったろう? 悪酔いだと。素人さんが深く考えずに幾つか同時に使ったみたいだな。幸か不幸か、血中濃度は高くない。後何日か遅ければ、脳がやられたかもしれんがね」
淡々と説明するロリコン医。
「……直るのか?」
「……薬を抜くだけなら、時間をかければ自然にも抜けるし、老廃物と一緒に抜くことも出来る。けどねえ」
顎に手をあて、思案する。
「……なんだ」
その様子に伐は問いかけた。
「……専門じゃないから、何とも言えないけど、精神的な奴はお手上げだ。鎮静剤くらいは出すが」
そう言って診察ノートに目を落とすペド医。
その胸ぐらが掴まれ、無理矢理立たされる。
「おい、本当だろうな」
「本当だ! 僕はモグリで十歳以下にしか欲情できない、屑なペドフィリアだが、こと、医療に関しては嘘は言わない!」
伐の迫力に怯えながらも、目を外さない。
なけなしのプライドという奴だろう。
「……ッ」
舌打ちを一つして手を離す。
「やれやれ、そんなに彼女が気に入ったのかい?」
安堵の息とともに言葉か漏れ出る。
「……そういうんじゃねえよ」
ペド医の言葉に不本意そうにつぶやく。
それを聞きながらペド医は診察ノートへと向かった。
「まあ、良いさ。鎮静剤は出しておくよ。あと、発作が起きたら、言葉をかけてやって、なるべく肯定してやるんだ。それからして欲しいと言うことは極力かなえて上げるんだね」
「……めんどくせえ」
ペド医から対処法を聞きつつ、心の底からめんどくさそうにつぶやく伐。
「なら、放り出せばいいだろう。裏の界隈じゃよくある話さ」
ペド医は肩をすくめてみせるが伐は何かの思考に没入しているようだった。
「…………あの人と……同じ場所だったからな」
「? 何の話しだい?」
伐のつぶやきの意味を、彼はわからなかった。
そのまま黙り込む伐に嘆息するペド医。
それから思い出したかのように口を開いた。
暗い、夜の路地裏。
未だ目を覚まさぬ金髪の少女をおぶって歩く伐。
脱力した人間は、わりと重いはずだが、その足取りに淀みはない。
つい先日も、同じ状態で立ち回りすら演じて見せたくらいである。
その足腰の強さは、大したものである。
しかし、その顔は冴えない。
「はあ、なにやってんだ、俺は……」
歩きながら嘆息する。
ペド医の話はこうだった。
『随分と乱暴な性交が多かったみたいだ。内性器や膣道が傷だらけだったよ。ホルモンバランスもやられてる。情緒の不安定さが出てくるだろう。あと……婦人科なり産婦人科なりに一度は行った方が良いね。ホルモンや排卵に関わる薬も大量に接種させられた形跡がある。影響が無いとは考えにくいね』
「めんどくせえ」
そう呟いて、伐は彼女を背負い直した。
第参夜、いかがでしたでしょう?
ちなみにペド医に名前はありません(爆笑)
そしてヒロイン寝っぱなし(爆)
それでは次回もよろしくお願いします。