第十五夜
ずいぶんとまたお待たせしてしまいました。
第十五夜、更新です!
読んで下さるみなさんに、楽しんでいただければ幸いです♪
続けて伐は、保険医の寄越した情報に目を通し始める。
大半は、洋介の調べたものと変わりない。
「……というか、プロが寄越した情報と遜色無いのか、洋介の情報は……」
思わずつぶやきながら一枚めくる。
と、その手が止まった。
片眉を上げ、眉間にしわを刻む。
「……なんだ? “コレ”は……」
空虚さを醸し出しながらつぶやいてしまう。
一通り読み終え、その紙束をにらみ付ける伐。手元に灰皿を寄せ、ライターで火を付ける。
たちまち燃え上がった紙を灰皿へたたき込み、炎が情報を焼き尽くすのを見守る。
その瞳に写る赤い揺らめきが、彼の心情を表しているようだった。
その後、シャワーで汗と体液を洗い落とし、身なりを整えてから、未だにボケてる二人を起こす。
「……でるぞ、さっさと準備しろ」
言うだけ言って出口へ向かう。それを見た少女らはあわててシャワールームへ飛び込んだ。
時間はとうに過ぎていたが、その辺りの料金は向こう持ち。
伐は気にする風でも無く、ホテルの出入り口へ向かう。
「周りはどうだ」
『……周りに人影は無いよ。今の内に出れば見つかる可能性は低いね』
出入り口付近の管理室のそばでつぶやく伐。それに答えるのは、くぐもった女の声。
「助かる」
それだけ言って、転がるように走ってきた少女らを見る。
後金を受け取り、おっかなびっくりホテルを出ていった彼女たちを見送ってから、管理室の窓を軽くノックし、金を置くとそのまま裏口からでてホテルを後にした。
棲み処への道すがら、煙草をくわえながら歩く。
考えるのは、保険医の寄越した資料に書いてあった事実。
あの部屋で見つけた黄金の毛髪。
それのDNA鑑定の結果が記されていた。
結果的に言えば、“ソレ”は、彼女の髪ではなかったらしい。
だが、誰のものかと書かれたソレを見たとき、伐の纏う空気は、明らかに絶対零度の刃と化していた。
そこには、『この毛髪はクリスティーナ本人のものではなく、近親者。兄のライオネル=ウエストロードのものである可能性が高い』と書かれていたからだ。
「……あいつも、家族に裏切られたって言うのか……」
無意識に口をついた言葉に、拳を握りしめる。
くわえた煙草を捨て、靴で踏み消し、赤さと黒さと青さを増し始めた空を見上げる。
「……なあ、俺はどうしたら良いんだ? 教えてくれよ……」
続いてつぶやかれた名前は、宙空に溶けて消え去った。
彼の心を写すように曇り始めた夕暮れの空。それを見つめるノラ猫の顔は、どこまでも空虚だった。
第十五夜、いかがでしたでしょうか?
得られた情報から導き出された、最悪にして衝撃の事実。
はたして、真実はどこにあるのでしょうか?
次回もよろしくお願いしますね♪