第十二夜
第十二夜、更新です♪
読んで下さるみなさんに、楽しんでいただければ幸いです♪
まだ朝日の感じられぬ暗さの中、ノラ猫は棲処としているテナントビルまで戻ってきた。
結局、あれからさらに二回戦ほどヤっていたのだが、来ると思っていた男達の仲間は現れず、捕らえて追加の情報を得るつもりだった二人はセックスを楽しんだだけだった。
捕らえた男二人はめぐみが肩に担いで帰っていったのだが、その様に何故か学園の生活指導担当が重なり、げんなりとしたのは、また別の話である。
「……」
ビルの前の半欠けのブロックに腰掛け、煙草をくわえる。ライターで火を着け、軽く吸う。
ため息混じりに紫煙を吐き出し、さらに嘆息する。 聞けば聞くほど、調べれば調べるほど、やっかいな事実が浮かび上がってくる。
まさに、大きな荷物を抱えた女だ。おまけに家事などは大して出来ない、金を稼がせることも出来ない。
正真正銘の面倒な女。
それでも……。
「…………めんどくせえ」
そう言いながらも、なぜだか捨てられない。
そんなことを考えつつ短くなった煙草を捨て、立ち上がりながら踏み消すと、ポケットの鍵をまさぐりながら玄関へ向かった。
鍵を開け、玄関をくぐると、シャツを羽織っただけの、金髪の少女が、ぱたぱたと小走りに寄ってくる。
「伐、お帰りなさい♪」
嬉しそうに、楽しそうに微笑みながら迎える少女、クリス。
伐に駆け寄ると、そのまま彼の首に腕を回す。
「ん」
そんな伐の返事を聞きながら、柔らかな唇を、彼の唇に押し付けていく。
そのまま、どちらからともなく舌を絡め始め、お互いの口腔を貪り合う。
彼女の腰に手を回し、軽く抱き寄せながら、空いている手で二つある白い山のひとつを揉みしだき始める伐。そのまま腰に回したてをスライドさせ、太すぎないボリュームの腿を撫でていく。その内股は、すでにスリットから溢れた分泌液でしとどに濡れており、雌の発情臭を放っていた。
頭がくらくらするほど濃くなっていく匂いを感じながら、己の象徴が堅く反り返るのを自覚する伐。
クリスも彼が与えてくれる刺激に身を任せるだけではなく、服の上から彼の体を撫でていく。
互いの興奮を感じつつ相手をたかぶらせていく二人。
女の内腿に、男の手が滑り込み、彼女のもう一つの口唇を指で優しく撫でていく。
それだけで少女の青い目の焦点が定まらなくなり、ノラ猫の目が鋭く細まる。
彼女の第二の口を、ゆっくり優しくなで上げ、興奮を煽っていく。
絡み合う肢体と肢体。互いを高め合う行為。
と。
クリスの体が跳ねた。二度、三度と繰り返し、体が軽く弛緩する。
唇と唇が別れを告げ、崩れ落ちかけるクリス。しかし伐はそんな彼女を片手で支え、そのまま抱えあげる。
足下もブレることなく、そのままソファーまで彼女を運んで横たえ、覆い被さっていく。
幾ばくかの時が経ち、お互い何度も達し、何度も交わった。
伐は気だるそうにソファーへともたれ掛かり、煙草を吹かす。
そんな彼の胸板を、艶めかしく動く、赤い軟体生物が這い回り、ナメクジのような這い跡を残していく。
金髪の少女は、己の口唇から伸びた其れを、彼の胸へと隙間が無くなるように這わせ続ける。
体を擦り付け、彼の太股をおのが内股へ挟み、大きすぎない程度に締まったまぁるい尻をグラインドさせ、自らの内より湧き出し分泌液を彼へと擦り付けていく。
その様子を見た伐は、はじめ、また発作かと訝しんだものの、目の輝きがいつもと違うことから好きにさせていた。 そうこうしている内に、少女は行為を進めていく。
胸から腋。腋から肩。肩から首筋。首筋から耳たぶ。
赤く蠢く其れで、伐の体を濡らしていくクリス。
胸を、腹を、腰を、腕を、足を、腋を、彼へと擦り付けていく。
それは、動物のやるマーキングに似ていた。
そんなクリスの必死さに、伐は煙草をくわえたまま、彼女頭を両手で挟んでその目を覗き込む。
かいま見えるは脅えの色。
「……どうした」
いまいち理由がつかめず訊ねる抜。そんな彼から顔を逸らそうとするが、両手で完全に固定され、ビクともしない。仕方無しに目だけ剃らせるクリス。
その態度に、少し苛立つ伐。
「……もう一度‘だけ’聞く。どうした?」
強調された‘だけ’の言葉に、クリスの体が一瞬震え、泣きそうになりながら口を開いた。
「…………だって……伐から知らない……女の人の匂いが……するんだもの……」
弱々しく言葉を紡ぐクリス。
「わ……私……これ‘しか’出来ないもの。伐が満足できなきゃ……ここに居る……意味……無くなっちゃうもん……」
その、青い瞳から、溢れる滴達。
「伐……捨てちゃ……やぁだぁ……やだよぉ……伐ぅ……捨て……ないでぇ……」
言いながら本格的に泣き出すクリス。目を瞑り、両手で擦るように、溢れる滴を拭う。
それを見て、伐は小さく嘆息する。
次の瞬間、クリスの額に衝撃が走った。
「あうっ?!」 軽く仰け反ったクリスの額に赤い跡。
伐がクリスの額に向けて、軽く指をはじいたせいだ。
「い、痛……」
「なにバカなこと言ってるんだ? お前は」
うめくクリスに伐は立ち上がりながら言い放ち、クリスの眉はショックで悲しみの色に染まっていく。
「……お前がここに居たくないなら出ていけばいい」
そう言うと、伐は灰皿へ煙草を押しつけ、そのままシャワー室へと足を向ける。
クリスは、伐の言葉の意味を反芻し、喜びの花を顔中に咲かせながら立ち上がると、彼の背中に飛びついた。
「うふふ……」
「……暑い。離れろ……」
べったりくっついてきたクリスに、嫌そうにしながら呟く伐。
「イ☆ヤ♪」
「ウゼエ」
「……離れない。伐がイヤだって言っても、もう離れないからね♪」
「……勝手にしろ」
「うん♪ 勝手にする☆」
そう言って、笑顔で体をくっつけてくるクリスの肌のぬくもりに、伐の口の端が、小さく持ち上がっていた。
第十二夜、いかがでしたでしょうか?
伐とクリス。ふたりのやりとりに悶えていただけたら感無量です♪