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第十夜

 第十夜を更新しました♪

 読んで下さるみなさんに楽しんでいただければ幸いです♪

「……結局見つかったのはこれだけか」

 広げたハンカチの上の、金色の毛髪を見ながら、シャギーの入ったショートボブの女性が呟く。

 その正面に立った、少年、黒須伐も同じものを眺めて嘆息した。

「で? どうするんだ? DNA鑑定でもするのか?」

「ああ。それは私の方で手配しよう。君は……」

「この部屋を借りた奴を洗う」

「……その通りだ」

 己の言葉を遮られたにも関わらず、不快さなど感じていないように微笑みながらうなずく女、北丘めぐみ。

 意趣返しも含めたつもりだった伐は、まるで効果の無かったことに少しだけ憮然となる。が、すぐに頭を切り替えた。

「なら、俺の方で伝手に心当たりがある。そちらから辿った方が気取られる可能性は小さい」

「そうか。なら頼むとしよう」

 言いつつ毛髪を傷めないようハンカチで包むように畳んでしまい込む。

「……引き上げるのか?」

「ああ、これ以上ここにいても益は無さそうだしな」

 そのまま玄関へ向かう彼女に倣う伐。

 ドアの前まで来ると、突然めぐみが止まる。

 抜へと鋭く視線を送りながら片手でついてきた少年を制する。

「ところでこの後、時間があるならホテルでもどうだい?」

 軽い口調で伐へと声をかける。だが、口調とは裏腹に視線の鋭さは増していく。

「へ、いいね。あんたもなかなかイジり甲斐ありそうな身体してるからな。思う存分、楽しませて貰うとするさ」

 伐も軽い調子で返す。だが、その目は鋭く細まり、身体に軽い緊張を纏わせる。そんな彼の顔の前で、めぐみの手が、二本の指を立てた。ついで伐を指さし、左へと向ける。

 頷きもせずに目だけでイエスのサインを送ると、めぐみの口元が少しだけ弛んだのが見えた。

 ふたりの虚構の掛け合いは続けられ、めぐみの手が一杯に広げられた。ゆっくり、間を測りながら指が折られていく。そのたびに、伐は弓を引き絞るように構えていく。

 そして、最後の一本が畳まれた瞬間、めぐみはドアを蹴り開けながら飛び出していった。




 飛び出した先にいたのは、スーツ姿の男性。しかし、その身体は、彼の筋肉によってパンパンに膨れ上がっていた。その懐へ、弾丸のように突き進むめぐみ。折り畳んだ腕の尖端が男の鳩尾に突き刺さ……らず、ブロックした腕に阻まれた。だが、めぐみの動きは止まらず、がら空きの脇に掌底を叩き込む。

「ぐぶっ?!」

 肋骨の折れる感触を感じながらも、男は丸太のような腕を振り回してめぐみの頭を狙う。

 しかし彼女は、身体を落として、地面に張り付く。まるで、トカゲか何かのような姿勢から、片手を軸に、インバネスコートを翻しながら回転し、膝裏を蹴りあげる。

「がっ?!」

 声を上げ、片膝をつく男。しかし、まだ倒れず、目の前の女が羽織るコートを掴み、引き寄せようとして、あまりの軽さに仰け反った。

 すでにめぐみはコートを脱ぎ捨てていたのだ。

 その隙を逃さず、彼女は男の顔面を鷲掴みにする。

「うごぉっ?!」

 己の頭蓋の軋む音と激痛に、悲鳴じみた声を上げる。何とか脱しようと彼女の腕を掴んだが、ビクともしなかった。

「……つまらんな。こんな程度か?」

 めぐみの言葉に戦慄した男は、両腕を無茶苦茶に振り回した。それが彼女の顔面を捉える。

 固い岩と岩がぶつかったかのような音が響き、男の腕が止まった。恐る恐る拳を退けた先には、冷徹に見下すめぐみの顔が覗いた。

「……で?」

 こともなげに問うてくる彼女に、戦意を砕かれる男。

 それを見ためぐみは、失望のため息を吐く。そして……。

「噴ッ!」

 声とも音ともつかないソレとともに廊下に後頭部から叩きつけられる男。白目を剥き、ピクリとも動かなくはなったが、どうやら生きてはいるようである。

「やれやれ、頑丈なことだ」

 そう呟きながら、めぐみはコートを拾い上げて担ぐと、新しい禁煙パイプをくわえて立ち上がった。




「ち、うぜぇ」

 めぐみに続いて飛び出した伐は、彼女が向かうのとは反対に立つ男へ向かった。

 やはりスーツ姿だが、こちらは絞られた筋肉をしている。

 出会い頭に頭を揺さぶるつもりだったが、繰り出した拳はあっさりスウェーで回避されてしまった。おまけに右のジャブでの牽制が途切れない。

 たまらず距離をとる伐。

「ボクサー崩れか……?」

 確認するように呟き、構えながら独特のリズムを刻む男を観察する。目が細まり、狙うべき場所を決めて半身で踏み込む。

 たちまち男の右拳が火を噴き、マシンガンのようなジャブが繰り出される。が、拳の先に伐の姿はない。

 まるで猫のようにしなやかな動きで、相手の脇をすり抜ける伐。

「!?」

 思わぬ出来事に、驚愕するボクサー崩れ。その背中に衝撃が走り、たたらを踏む。

 すり抜けた向こうで、勢いを殺さぬまま長い足が流れるように蹴りを放ったのだ。

「ち。わりと強めに蹴ったんだがな。やっぱ背筋が防具代わりになったか」

 痛みに顔をしかめながら振り向いてきたボクサー崩れを見て舌を打つ伐。

 そのまま突進してくる彼を迎撃せんと身構え、拳を振り上げた。それを見たボクサー崩れは、カウンターを合わせんと左を振るい……悶絶しながら崩れ落ちた。

 殴ると見せかけた伐に、股間を蹴り抜かれたのだ。

「アホか、殴り合いのエキスパートに拳で勝とうとする訳ないだろ」

 言いながらうずくまる男の顔面を蹴り飛ばし、容赦なく意識を刈り取る伐。

 そこへめぐみもやってくる。

「さて、尋問タイムといこうか」

 第十夜、いかがでしたでしょうか?

 実は、伐の戦闘スタイルがよくわかりません……。

 まあさん! 伐のリアルファイとシーンをっ!!

 結構切実に知りたいッス!


 次回もよろしくお願いします♪

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