第零夜
まあさん作、『嘘と話術と野良猫』の主人公、黒須伐と、拙作、『バカと雲雀と召喚獣』のクリスティーナ=ウェストロードが出会う。
“もし”の物語です。
ギリギリな、あだると表現がありますので、苦手な方はお気を付け下さい。
まあさんやまあさんのファンに怒られないと良いなあ。
むせかえる臭気の中、リズミカルな呼気に合わせて、濡れた肉と肉の打ち合う音が響く。
薄暗がりの中に映える、白い肢体が跳ねまわり、くすんでしまった長い金髪が引かれ、身を起こされる。
背後にいるものに抱えられ、二つある白い柔玉の片方を揉みつぶされながら、その突端の、桜色を力強く摘まれ、軽く声を上げる。
そして、背後からの上下運動に突き上げられ、身体全体が、跳ねる。跳ねる。跳ねる。跳ねる。
ままならぬ呼吸に喘ぎながら、心の臓の動きが大きくなる。
下から聞こえる、肉を打つ音が激しくなり、身体の芯が固まっていき、呼吸を荒げる。
「っ?!?!」
身体の全てが停止したかのように硬直し、呼吸が止まる。脳髄が煮えたぎって意識が溶かされ、身体の芯がグズグズになり、彼女のすべてが溶け出したかのように弛緩した。
肺が欲するままに口を開け、空気を取り入れようとする。
その背後で、息を呑む音が聞こえ、堪えるように硬直。
次の瞬間、その、己の白い腹の奥に解き放たれるのを感じる。
発露したい感情を、急激に消耗させられた酸素を欲する衝動に押し流され、悲しむことも出来ない。
さらに、遙か下方から聞こえる音は止まず、またもや身体の中心が凝り固まり、胸の奥の衝撃は太鼓を叩くように強くなる。
あっという間に頭の中が燃え上がり、考えるということすら出来なくなる。
そして、再度、身体の奥を汚され、その事に感慨を抱くこともなく冷たい床に身体を投げ出した。
己を抱えていたものが離れていく感触にも、ただ、身体を震わせることしかできない。
奥から溢れ出ていくその感触を、妙に強く感じながら、痙攣だけを繰り返す。
ただの白い塊と成り果てたその頭を持ち上げられ、未だ酸素を取り込むための、空洞と化したそこに、蓋がねじり込まれても反応を返すことも出来ない。
そこへ近づく、野獣の眼。眼。眼。
おののく事も出来ず、彼女。 クリスティーナ=ウェストロードの夜は明けなかった。
ふと、意識が覚醒すると、野獣達の酒宴は、幕を閉じていた。
いつもと様子が違うことに気づくと、己の手足が拘束されていなかった。
そして……。
ドアが半開きになっていることに気づく。
周囲は、酒瓶やピルケースなどが散乱しており、数人の猛獣達のいびきが聞こえる。
信じられない面もちで、疲労に染まった身体にむち打ちながら戸を開けた。
あっさり開いたことに驚きながら、静かに戸を閉めると、音を立てぬように移動する。
と。
不意に便所の戸が開き、寝ぼけ眼の男が一人、裸で表れた。
声を上げる間もなく、放たれた拳が顎を捉え、男は足下からくず折れた。
その音に彼女は疲労の抜けない身体にむち打ち、生まれたままの姿で玄関から外へ飛び出した。
夜の街。
無我夢中だった彼女は、どこをどう走ったかもわからない。
身を切り始めた肌寒さに、平静さを取り戻すと、己の身体を覆うものがないことに気づき、ここしばらく、打ち砕かれていた羞恥心が甦るのを感じた。
と、己の下方から溢れ出るものを感じ、足下に落ちたそれを見て、絶望感に染まりそうになる。
だが、頭を振り、その顔に意志を漲らせると、目立たぬように歩き始めた。
おりしも九月も終わり、十月に入ろうという頃。
寒さに切り刻まれるのを感じ、凍える身体に、死の恐怖がチラつく。
その視界の端に入った粗大ゴミの山を祈る思いで必死にひっくり返すと、ゴミ袋に包まれた、ボロボロの薄汚れた毛布を見つけた。
その幸運に感謝しつつ、毛布を纏って歩き出す。
明かりの少ない裏通りを警戒しながら歩く少女の鼻先に、冷たい感触がはしる。
見上げると、顔に、一つ二つと当たるもの。
徐々に増えるそれに追い立てられるように走り出す。
天から降り注ぐそれは、程なく勢いづき、彼女を毛布ごと濡らしていった。
水を吸って重くなったそれを捨てることも出来ず、雨によって体温を奪われ続けた彼女は、とうとう足元から崩れていった。
「ちっ、シケてやがる……。散々サービスしてやったってのに、たったの五枚かよ……」
その日、予定より早く夜の仕事を終えた少年は、傘を差しながら、くわえ煙草を揺らして舌打ちした。
好きものの熟女が相手だったが、出張中の旦那が急遽帰ってきたらしく、金だけ放って帰ってしまった。
しかも、貰うはずだった金額の半分以下。
「……次は上乗せしてやる」
邪悪な笑みを浮かべ、懐に金を押し込む。
と、顔を上げた視線の先に、黒い塊が見えた。
「……なんだ?」
不審に思い、近づいていく。
警戒したまま足先で突つくが反応がない。
距離を保ちながら回り込むと白い手が覗いているのが見えた。
「……死体か?」
訝しみながら足で転がす。
その黒い塊からまろび出る白い白い塊。
息を呑んだ。
白い裸体に、くすんだ金髪。
その肢体は、今まで見た中でも最上だった。
「生きて……るのか?」
白い果実の間ら見えるサインに苦虫を噛み潰す。
彼女に背を向けて歩き出す少年。
「めんどくせえ」
わざわざ声に出して言い聞かせる。
「う、あ……」
雨の音に紛れて聞こえた声に足を止めてしまう。
おもむろに頭を掻きはじめて、回れ右。
憮然としながら少女の元に戻ると、上着を脱いだ。
「あ〜〜、めんどくせえ、めをどくせえ、めんどくせえ」
数分後、自らの上着を羽織らせた彼女を背負い、ぶつぶつ言いながら歩く少年。
黒須伐の姿があった。
これは、あり得ない物語。
出会うはずの無い男女が出会い、紡ぐ物語。
『バカと雲雀と召喚獣if 夜の帳と野良猫と堕天使』
どうでしたか?
みなさんの反応が怖くて、ガクブル状態です。
あだると表現、アウトかなぁ……。
そこが一番心配……。
続くかは、みなさんの反応次第かなあ……。