### 第7巻 第三章:共鳴する地下街
### 第7巻 第三章:共鳴する地下街
地下深層、プロトコル・ゼロの残骸が広がる空間。かつて僕たちが管理官の塔で見たような、無数のデータが光の帯となって明滅している。
少年のギターの音が、この深淵まで浸透していた。
彼はただ自分の感情を表現しているだけだ。しかし、その旋律が発する特定の周波数が、地下の自動修復プログラム――「調律を再開せよ」という命令コード――を刺激し、街の物理法則を勝手に上書きしようとしている。
「レイ、このままでは……! あの少年が『調律師』としての権限を、意図せず引き継いでしまうわ!」
僕たちは急いで地下の回路にアクセスする。
そこには、僕たちが消えた後、街を「正常な状態」に戻そうとするプログラムの意思が、意志なき怪物のように蠢いていた。
「彼に、今のこの街を支配する資格なんてない。彼が望んでいるのは、誰かの心に自分の歌を届けることだけなんだ!」
僕はシノと手を取り合い、地下に潜む「調律の源流」へ向かって僕たちの全存在をぶつけた。
僕たちは、かつての調律師たちが遺したシステムを、文字通り「破壊」しなければならない。音楽というツールをシステムの一部として利用するのではなく、完全に切り離し、システムそのものを『ただの無機質な基盤』へと変えるために。
「シノ、僕の意識を増幅器にして。この地下の回路すべてに、僕たちの『ノイズ』を叩き込むんだ!」
僕たちの亡霊としての全エネルギーが、地下の巨大なコンソールへ注ぎ込まれる。
システムは激しく抵抗した。警報のような警告音が街中に響き渡る。地上でギターを奏でていた少年も、異変を察知して弦を押さえる指を止めた。
システムは、僕たちという「バグ」を排除しようと、過去の調律師たちの記憶を具現化して攻撃を仕掛けてくる。それはかつて僕たちが乗り越えたものより、さらに鋭く、冷徹な論理の嵐だった。
「これで最後よ、レイ。この場所さえ壊せば、音楽はシステムから自由になる!」
僕たちの意識が、極限まで引き伸ばされる。
地下の回路が火花を散らし、街全体を維持していた最後の論理的支柱が、音を立てて崩れ去ろうとしていた。
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