5.実力強化(前編)
2つに分けました。
身体は無事だ。
場所も、ちゃんとうちの屋敷だ。
……よかった。
昨日の刺客のことを思い出す。
(いきなり初日から来るとか、ありえないだろ……)
思わずため息が出た。
(「危機一髪」さん、本当にありがとうございます。)
内心でスキルにお礼を言う。
朝。
師匠たちと一緒に朝食を取る。
キシンさんがこちらを見た。
「クリスティーナ、大丈夫か。」
「はい、なんとか。」
モロッチョさんが腕を組む。
「坊主は確率操作系のスキルだな。」
少し考えるように言った。
「当分は何とかなるだろう。」
そして真面目な顔になる。
「それでも、ゼロ%じゃない。」
キシンさんも頷いた。
「その通りじゃ。」
「刺客が来ても、逆に返り討ちにできるくらいには強くならねばならん。」
(要するに――)
(強くなれってことだな。)
まあ、当然か。
(頑張るしかないな。)
修行の予定も決まった。
昼までは魔術の訓練。
昼からは剣術の修行。
師匠たちと相談して決めたらしい。
まずは剣術……ではなく、今日は魔術からだった。
庭に出ると、モロッチョさんが待っている。
キシンさんの姿はない。
(多分……山だな)
昨日の場所を思い出す。
「よろしくお願いします。」
俺は頭を下げた。
こうして――
クリスティーナの修行生活が、本格的に始まった。
まず最初は魔素感知だった。
モロッチョさんが説明する。
「簡単に言えば、魔素を感じ取ることだ。」
「魔力で周囲の魔素を動かす。」
「だが、魔素を認識できなければ動かせない。」
なるほど。
つまり――
まず感じろということだ。
目を閉じる。
(周囲の空気……)
(魔力を使って……)
すると――
(……あれ?)
空気の中に、微かに何かが動いている感覚がある。
まるで、水の流れのような。
「……できました。」
モロッチョさんの眉が上がった。
「ほう。」
「早いな。」
次は魔力循環だった。
「今度は体の中だ。」
モロッチョさんが言う。
「意識を自分の内側に向けろ。」
「そして、魔力を体内で巡らせる。」
(内側に意識を……)
目を閉じる。
自分の体を意識する。
(ここか……?)
胸の奥に、温かい感覚がある。
それを動かしてみる。
ゆっくりと。
体の中を回すように――
「できました。」
モロッチョさんが少し驚いた顔をした。
「……もうか。」
そして言う。
「なら、それを一点に集中してみろ。」
(集中……)
胸に魔力を集める。
すると――
魔力がぎゅっと固まる感覚がした。
「こんな感じですか?」
「そうだ。」
モロッチョさんが頷いた。
「それを毎日やれ。」
「上達すれば、魔素や魔力の動きから敵の動きも察知できる。」
(なるほど。)
基礎だな。
(基礎は大事だ。)
前世でも散々聞いた言葉だ。
(怠っちゃいけない。)
「分かりました。」
午前の訓練はそれで終わった。
地味だが、重要な訓練だ。
それから昼まで、俺はひたすら魔力循環を続けた。
昼からは剣術の修行だ。
場所は――
またあの滝のある平地だった。
(やっぱりここか)
キシンさんが朝いなかったのは、きっと安全確認をしていたのだろう。
平地に着くと、キシンさんが説明を始めた。
「剣術には主に三つの方向がある。」
指を三本立てる。
「一つは攻撃力を高める剣。」
「二つ目は手数を増やす剣。」
「三つ目は技術を磨く剣。」
そして言う。
「今回の修行では、三つ目――技術を鍛える。」
なるほど。
「まずは基本だ。」
「構えと型を覚えろ。」
「構えは主に三つ。」
キシンさんが剣を持つ。
「上段。」
剣を高く構える。
「下段。」
剣先を低く落とす。
「そして――青眼(中段)。」
剣先がまっすぐこちらを向く。
「まずは青眼からじゃ。」
キシンさんが手本を見せた。
俺も真似する。
……すると。
「違う。」
「腰が甘い。」
「肩の力を抜け。」
「あー違う違う。」
めちゃくちゃ言われた。
何度もやり直す。
そして――
ようやく。
「……うむ。」
キシンさんが頷いた。
「合格じゃ。」
(長かった……)
前世で剣道を少しやったことはある。
だが――
「型」はもっと酷かった。
体が全然動かない。
(まあ……)
(慣れれば大丈夫だろ。)
するとキシンさんが言った。
「明日からは、合格が出るまで繰り返す。」
「余った時間で他の修行をする。」
つまり――
終わらない限り次に進めない。
(自主練しないとまずいな……)
その日の夜。
修行の疲れで、俺は夕食を食べたあと――
すぐに寝てしまった。
それから一ヶ月後。
ついにスキルを獲得した。
《持久Lv.1》
《恐怖耐性Lv.1》
《魔力操作Lv.1》
朝のランニングで持久。
キシンさんの殺気で恐怖耐性。
(殺気って精神攻撃なのか?)
戦場に行けば、誰でも獲得できそうだ。
だが、モロッチョさんは首を振った。
「そんな簡単じゃない。」
「恐怖耐性を得られたのは、お前が本気で恐怖を感じたからだ。」
「それほどの殺気は普通の人間には出せない。」
「キシンが特別なんだ。」
なるほど。
「それに――」
モロッチョさんが少し笑う。
「それに耐えたお前も大したものだ。」
魔力操作は、練習していたら自然に手に入った。
つまり――
努力の結果だ。
(やっぱりこれだな。)
前世の言葉を思い出す。
「継続こそ力なり。




