間話 お手伝いさん達 其の1
今のうちに、お手伝いさんについて書きます。
私の名前は、アルファ=ナロック。
ワシントン様に仕える侍女です。
主に家事と育児を任されています。
家事の方は、もう慣れたものです。
ですが――
育児だけは、どうしても不安がありました。
ワシントン様に長男がお生まれになったとき、私はその子の世話係を任されたのです。
その長男の名前は――
クリスティーナ=べレック様。
……正直に言ってしまうと、この子は少し気味が悪いのです。
ワシントン様は屋敷を空けることが多く、私が乳を与えることもあります。
そのとき――
クリスティーナ様は、こちらをじっと見てくるのです。
それも、ただ赤ん坊が見るような目ではありません。
……なんというか。
嫌らしい目つきなのです。
まるで、放蕩貴族が女性を見るときのような。
(この子、大丈夫なのかしら……)
将来が少し心配になります。
それだけではありません。
歩けるようになってからは、よく屋敷の中を歩き回るのですが――
なぜかヒンドスタン様の書斎に入っていくのです。
そして、本棚の前で本を開いている。
もちろん、本当に読めているはずはありません。
まだ子どもなのですから。
それでも――
なぜか読んでいるように見えるのです。
それに、妙に大人びている気もします。
言葉遣いも、子どもとは思えないほど丁寧です。
気になった私は、ワシントン様に相談してみました。
すると――
「好奇心旺盛なのはいいことだ。」
ワシントン様は笑いながら言いました。
「それに、言葉遣いは丁寧なほうがいいだろう?」
……あまり気にしていない様子でした。
なので私は、今度は他の侍女たちに相談してみました。
「ねえねえ。」
私は小声で聞きます。
「クリスティーナ様のこと、どう思う?」
侍女の一人が首をかしげました。
「どうって?」
「なんか……気味悪くない?」
少し考えてから、別の侍女が言います。
「そうかな?」
すると、もう一人が言いました。
「……ああ、確かに。ちょっと変かも。」
私は少し安心しました。
やっぱり、私だけじゃなかったのです。
ですが、その会話を聞いていた年上の侍女が、ため息をつきました。
「あなたたちねぇ。」
腕を組んで言います。
「私たちは、べレック様に言われたことをやればいいの。」
「余計なことを考える必要はないでしょ。」
私は聞きました。
「でも、一応ワシントン様には相談しましたよ?」
「なんて言われたの?」
「気にしなくていいって。」
すると、その侍女は肩をすくめました。
「じゃあ、気にしなきゃいいじゃない。」
……確かに、その通りです。
(私は、私のやるべき仕事をすればいい)
そう思ってからは、クリスティーナ様のことをあまり気にしないようにしました。
……まあ。
たまに、あの妙に大人びた目で見られると、少し怖いのですが。
これで、クリスティーナの恐ろしさがわかりましたね。




