2.家庭教師
今日から、魔法習得への道が始まる。
どうやら両親は、最初から僕に魔法を習わせるつもりだったらしい。以前、二人が話し合っているのをこっそり聞いたことがある。
「父さん、魔法を習いたい。」
僕がそう言うと、父は少し考えてから言った。
「剣も習わないか?」
「魔法のほうがいい。」
「魔素の保有量によっては、少しは使えるかもしれんな。魔導剣士を目指すのもいい。どうせなら両方やるのもありだ。」
(大胆だな……さすが大貴族。)
ちなみに、父――ヒンドスタン=べレックは子爵で、領地経営もうまくいっており、かなり裕福だ。
母――ワシントン=べレックは元冒険者で、迷宮攻略の功績によって国の中でも名が知られている人物らしい。
今思うと、かなりいい家に生まれてきたものだ。
(変な争いに巻き込まれないといいけどな)
――もっとも、その願いは叶わなかったのだが。
それはまた、いつかの話である。
そのとき、家のドアがロックされる音が聞こえた。
遂に来たか。
魔法を教える人といえば、だいたいおじいさんかおばあさん。
剣を教える人といえば、筋肉マッチョ。
……そんなイメージだった。
だが、実際に現れたのは違った。
「坊主、よろしくな。」
「……。」
一人、めちゃくちゃ怖そうな人がいるんですけど。
でも、よく見れば筋肉マッチョと爺さん。
結局、予想通りと言えば予想通りだ。
父が二人を紹介してくれた。
「こっちがモロッチョ=カンナ。魔法を教えてくれる。これでもかなり腕が立つぞ。」
「よろしくな、坊主。」
「ええー。」
普通、逆じゃない?
まあ……いいか。
爺さんのほうが剣術を教えてくれるのだろう。
「坊主、不満か?」
「い、いいえ。お会いできて光栄です。」
「ほう、礼儀正しいな。」
父は、もう一人の爺さんを指さした。
「こっちがキシン=タロネン。見た目は怖いが、弟子はみんな優秀だぞ。お前の母さんの元パーティメンバーでもある。」
「本当は来たくなかったが、仕方なく来た。わしを失望させるなよ。」
「は、はい。」
……このお爺さん、絶対強い。
そして次の言葉で、僕は完全に固まった。
「今から試験をする。俺について来い。」
「ええー!? 父さん助けて!」
「そういう約束だ。」
「先に言ってよ!」
「ははは、坊主。これはキシンの弟子になるための試験だ。安心しろ、技術系の試験は出ない。そういうものだと思え。」
そう言うと、ヒンドスタンは真っ先に逃げた。
続いてモロッチョも逃げていく。
それほど、タロネンの試験は厳しいのだ。
ヒンドスタンもモロッチョも、内心では冷や汗をかいていた。
果たして、幼児にそんな試験ができるのか――。
無理だろ。
父さんもモロッチョさんも逃げてるじゃないか。
僕、まだ幼児なんですけど。
親もひどい。絶対、知っててやってるよな。
できる気がしない。
いや、流石にそこまで厳しくはないはずだ。
……そう信じよう。
そうして、僕はキシンさんに認めてもらえるのだろうか。
(ははは……流石にそんなに厳しくないよね?)
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