7.魔物討伐ー前編ー
今日は明日の実戦訓練に備えて、モロッチョさんとキシンさんから魔物や魔導剣士についての講義を受けることになった。
いきなり実戦では危険すぎる。
(事前学習なしで突っ込むとか、さすがのキシンさんでも無理だろ……)
というわけで、今日は大人しく勉強した。
今回の訓練のルールは簡単だ。
森の道を、スタート地点からゴールまで進むこと。
そして――
日が沈むまでにゴールすること。
位置情報は魔道具で常に監視されているらしい。
さらに、危険な場合は緊急ボタンを押せば、すぐに救助が来る仕組みだ。
(思ったより安全だな。)
これなら、そこまで心配しなくてもよさそうだ。
森に出現する魔物についても教わった。
まずは――
モンスター・ディア。
鹿型の魔物で、基本的には素早いだけの魔物だ。
次に――
デモン・モンキー。
猿型の魔物で、木の上から奇襲してくることが多い。
そして――
オーク。
イノシシ型の魔物で、突進力が高い。
これらは魔族とは違い知能が低いため、比較的討伐しやすいらしい。
さらに、この森は魔素量もそこまで多くない。
そのため、強力な個体は少ない。
ただし――
「群れには気をつけろ。」
キシンさんが言った。
「群れている魔物は危険度が一気に上がる。」
「その場合は戦うな。逃げろ。」
(なるほど。)
この辺は、しっかり覚えておかないと。
(ここで主人公が死ぬとか、笑えないからな……)
こうして、神無月竜星は明日の訓練に向けて準備を進めていった。
✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝
その頃――
レブリック公国。
フォッタ公爵派のサランダ子爵は、とある人物と密会していた。
薄暗い部屋の中。
男が静かに言う。
「……ついに蜘蛛軍団を動かす時が来たか。」
向かいに座る男が笑う。
「ええ。」
「ちゃんと罠にはまるように仕込んでおきましたよ。」
子爵が目を細めた。
「成功率は?」
男は即答する。
「ほぼ100%です。」
「ほう……。」
子爵が続けて聞く。
「お主と蜘蛛軍団、どちらが強い?」
男は少し考えた。
「集団で来られたら……」
「なんとか勝てる程度ですね。」
子爵は低い声で言う。
「必ず成功させろ。」
男は不敵に笑った。
「お任せください。」
「子爵様や伯爵様のお望み通り――」
そして静かに言った。
「クリスティーナを殺します。」
少し間を置いて続ける。
「ただ……」
「スキル《危機一髪》が、かなり厄介でして。」
「最悪の場合、力押しになります。」
「ですが――」
「フォッタ公爵派が関与したことは、絶対にバレないようにします。」
こうして――
フォッタ伯爵派は、密かに動き出した。
✝✝✝✝✝✝✝✝✝✝
翌日。
(わーい。)
(ピクニックだ。遠足だ。)
山の空気が気持ちいい。
(山登りは楽しいな。)
(魔物討伐は楽しくないけど。)
神無月竜星はキシンさんに連れられて、スタート地点まで来ていた。
そして――
正午。
訓練が開始される。
モロッチョさんの特殊スキル**《念話》**によって、頭の中に声が響いた。
『始めろ、坊主。』
「了解。」
俺はすぐに森へ入った。
……うわ。
(暗い。)
木が多すぎて、光がほとんど届かない。
(見えづらいな……)
その瞬間――
頭の中に声が響く。
『スキル《暗視Lv.1》を獲得しました。』
(ナイスタイミング。)
視界が少し明るくなった。
「おお……」
さっきよりは見える。
とはいえ――
(まだLv.1だからな。)
完全ではない。
そのとき。
前方に影が動いた。
(あ。)
鹿だ。
モンスター・ディア。
「逃げるなよ。」
風魔法で加速。
さらに身体能力強化。
一気に距離を詰める。
鹿が振り向く。
しかし――
遅い。
剣を振る。
一閃。
首が飛ぶ。
首を失った鹿は、その場で崩れ落ちた。
すると、頭の中に声が響く。
『人間Lv.1 → Lv.2 に上がりました。』
『スキル《予測Lv.1》 → Lv.2』
『スキル《並列思考Lv.1》 → Lv.2』
『スキル《結界防御Lv.1》 → Lv.2』
(おお……)
思ったより成長したな。
剣についた血を払う。
そして森の奥を見る。
(さて……)
(この森で死ぬとか、冗談じゃない。)
神無月竜星は、さらに森の奥へと進んでいった。
神無月竜星が「ここで死ぬなんてね」って言ってますけど、主人公をも苦しめていく予定です。僕はご都合主義じゃないんで。実力主義なんで。




