初めての三人依頼!
王都の冒険者ギルドで、受付嬢が一枚の依頼票を差し出した。
「近郊の農村からの依頼です。最近、夜になると野犬の群れが畑を荒らして困っているそうで」
「野犬退治か! よし、任せろ!」
俺は胸を叩いた。……揺れた。
「……」
「……」
「な、なに見てんだ二人とも!」
リリアはくすっと笑い、セラフィナは冷たい視線を投げた。
「……軽薄だな」
「誰が軽薄だ! 俺は勇者だぞ!」
「そう名乗る女など、怪しさしかない」
「ぐぬぬ……!」
こうして俺とリリア、そして監視役のセラフィナの三人で、初めての依頼に向かうことになった。
⸻
月明かりに照らされた畑の脇で、俺たちは息を潜めた。
遠くから低い唸り声。影が揺れる。
「来るぞ……!」
ガサリ、と草むらから飛び出したのは牙を剥いた野犬たち。六匹の群れだ。
「ふん、こんな小物」セラフィナが剣を構える。
「よし、勇者アレン様が先陣を切る!」
俺は剣を振り上げて突撃――したつもりだった。
が。
「はっや! 足速っ!? うわあああああ!?」
野犬が飛びかかり、俺は慌てて転倒。
スカートがめくれ上がる。
「アレン! 下着見えてる!」
「やめろリリアぁぁぁ!」
剣を振るも空振り。犬は軽々とかわす。
さらに胸が揺れてバランスを崩す。
「ちょ、胸のせいで腕が! 剣が! 狙いがブレるんだよおお!」
「知らないよ!」リリアの悲鳴混じりのツッコミ。
「……醜態だな」セラフィナの冷酷な一言。
ぐっ……! くそっ……!
⸻
野犬が三匹同時に襲いかかる。
俺はとっさに地面へ転がり、泥を思い切り掴んで――
「くらえええええええっ!」
犬の目に投げつけた。
「キャンッ!?」
「ワウッ!?」
怯んだ野犬たち。その隙を見逃さず、リリアが魔法で閃光を放ち、セラフィナが一閃で斬り払う。
俺も必死に剣を振り下ろし、一匹を叩き伏せた。
……数分後。
野犬たちは吠えながら森の奥へ逃げていった。
⸻
「はぁ……はぁ……よし! 勝ったな!」
「泥遊びしてただけに見えたけど」
「遊びじゃねえ! 戦術だ!」
胸を張る俺。……揺れた。リリアがじと目で見て、俺は慌てて押さえた。
セラフィナは腕を組み、俺を見下ろす。
「……力も技も未熟。だが、即興で泥を投げる判断は悪くなかった」
「なっ!? 今、ちょっと褒めただろ!」
「事実を述べただけだ」
ぷいっと顔をそむけるセラフィナ。
俺はにやけを隠せなかった。
「へっ……この体でもやれるさ。絶対に、俺は男に戻って……そして――」
月明かりに拳を掲げる。
「理想のハーレムを築いてみせる!」
「……ほんとにそこ目指すんだ」リリアが呆れる。
「……バカか」セラフィナが冷たく吐き捨てる。
だが俺は構わない。
勇者アレンの、女体修行はまだ始まったばかりだ。