銀髪の騎士セラフィナ
スライム退治が終わった後。
俺は肩で息をしながら、剣を突き立てて立っていた。
「……ふ、ふふ……やっぱり勇者にとっちゃ余裕だな」
「どの口が言うの!? 転がってばっかりだったじゃん!」
「うるさい!」
リリアの容赦ないツッコミに、俺は涙目で反論する。
そんな俺を冷たい視線で見ていたのが――銀髪の騎士、セラフィナだ。
「……やはり、どう見ても勇者には思えん」
「な、なにぃ!? 俺を誰だと思ってる!」
「見た目はただの娘。腕は素人以下。とても王国の希望とは呼べん」
ぐはっ! 痛烈すぎる正論ッ!
リリアが慌てて割って入る。
「ちょっと! 本当に勇者なんです! 事情があって、今は女の体になってるだけで!」
「……は?」
セラフィナは呆れたように俺を一瞥した。
「自分は勇者だと言い張り、女体を理由に負け犬の言い訳……頭のおかしい冒険者にしか見えん」
「娘じゃねぇぇぇぇぇ!!!」
俺は地団駄を踏んだ。胸が揺れてリリアに見られ、さらに赤面する。
⸻
数日後。
王都の城で、俺たちは国王の前に立たされていた。
「勇者アレン、消息不明……しかしこの者は“自ら勇者だ”と名乗る」
セラフィナが報告する。
国王は俺をじっと見た。
「……確かに妙だ。だが、もし本当に勇者の魂を持つなら……」
俺は慌てて叫んだ。
「俺は勇者だ! 魔王に負けて体を奪われただけだ! 絶対に取り戻す!」
その目を見据え、国王はゆっくりと頷いた。
「よかろう。ならば試すがよい。セラフィナ、貴様はこの娘を監視せよ」
「はっ……!」
「ちょ、ちょっと待て! なんでこの女が監視役なんだ!」
「勇者を騙る輩を野放しにはできんからだ」
「だから俺は男だっての!!!」
⸻
城を出た俺とリリア。その後ろから堂々と歩いてくる影。
セラフィナだ。
「……ついてくるのか?」
「当然だ。監視対象だからな」
「勝手に決めるな!」
「命令だ。従え」
ツン、と顔をそむけるセラフィナ。
くっそおおおお……!
「リリアぁぁぁ! 俺のハーレム計画が監視付きになっちまったぁぁぁ!」
「最初から無理でしょ」
幼なじみの冷静な一言に、俺はその場に崩れ落ちた。
こうして――勇者パーティに、ツンツン騎士セラフィナが加わったのである。