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第5話

太陽が照りつけ、夏の日差しが肌を刺す今日、咲希から突然の連絡で、奏と3人で近くのプールに行くことになった。

夏休みに入った1週間、宿題をするか本を読むかの夏休みを過ごすつもりだったはずの泰志だが、その誘いに乗った。

理由は自分でも分かっていない。



 「お!早い到着だね〜」



駅前で待っていると、奏の声がしてその方向に泰志は顔を向ける。

奏はショートパンツに白いTシャツを着ていて、スタイルの良さが如実に出ている。

隣に立つ咲希はロングスカートを履いていて、奏とは対照的に露出は低めだ。



 「………」


 「何?黙り込んで?もしかして、見惚れちゃった?」


 「……いや、改めて来なければ良かったと思っただけだ」



2人の姿を見た途端、泰志はそう思った。

美少女2人を引き連れる普通の男、泰志は自分が浮く気がしたのだ。



 「そんなこと言わずに!楽しもうよ〜」



奏は泰志の腹に肘をグイグイと当ててくる。

そんな2人を咲希は微笑ましそうに眺めている。



 「それじゃあ、揃ったし行こうか」


 「あ!ちょっと待って!」



奏がそう言うと、咲希が慌てて止める。



 「何?どうかしたの?」


 「その……実はもう一人居て」


 「そうなの?咲希ちゃんの友達?」


 「そ、そんなところ!」


 

どこが様子がおかしいと感じた泰志が口を開こうとしたその時、背後に気配を感じた。



 「……どういうつもりだ?海星」



振り向くと、手ぶらの翔哉が泰志達を睨みながら立っていた。



 「咲希ちゃん!?どういうこと!?」



翔哉とほぼ同じタイミングで奏も声を上げる。



 「これはその、2人に仲良くなって欲しくって!」


 「こんな不良と!?無理に決まってるでしょ!」



奏は咲希の肩を揺らしながら、猛抗議をする。



 「大丈夫!翔ちゃんはああ見えて優しいから!仲良くなって、また4人で遊ぼうよ!」



咲希の言葉に、翔哉はぴくりと反応する。

その場に居る誰も気づかない程少し。



 「これで全員揃ったし、行こっか!」


 「咲希ちゃん!私の話を聞いてー!」



奏の叫びを無視して、咲希はプールの方へと歩き始めた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 (咲希の奴、何考えてるんだ?)



目的地に到着し、水着に着替えるため、男女で更衣室に分かれて入る。

泰志は当然、翔哉と一緒に入ったが、会話は一言もなく、翔哉は黙って着替えている。



 (いつぶりだろう。翔哉……土谷とこうして2人になるのは)



小学生の頃は、毎日のように遊んでいたのに、あの事故以降、中学生になる頃にはいつの間にか疎遠になっていた。

学校ですれ違っても、お互いに話すことはなく、他の人に昔は仲が良かったと言っても信じて貰えないだろう。


泰志がそんな事を考えている間に、翔哉は着替えを終え、更衣室を出て行った。

泰志も水着に着替え、更衣室を後にする。



 「お!着替えもさすがに早いね〜」



更衣室を出て10分、女子更衣室から水着に着替えた2人が出てきた。

その姿に、泰志は一瞬ドキッとした。

2人が着用している水着は、セパレートタイプで、素肌が露わになっていたからだ。



 「ん〜?泰志君には刺激が強すぎたかな〜」



泰志が見惚れていることに気づいた奏が、ニヤニヤしながら挑発する。



 「……あんまりからかうな」


 

泰志は恥ずかしさを隠すようにそっぽを向く。

その反応が面白かったのか、奏はケラケラと笑っている。



 「おい、さっさと行くぞ」



そんな2人のやり取りを全く気にすることなく、翔哉はレジャーシートなどの荷物を持ってプールの方へと歩いていく。



 「ちぇ、いいとこだったのに」


 「僕をからかうための玩具にするな」



残念と肩を落とす奏に、泰志は呆れて言う。

翔哉に続いて、2人は歩こうとしたが、咲希が立ったまま動かない事に気づく。



 「咲希?どうかしたか?」


 「……ううん、なんでもない」



泰志がそう聞くと、咲希は首を横に振って笑った。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



プールサイドに着くやいなや、奏は走ってプールに飛び込み、係員に注意されていた。

泰志と咲希も飛び込みはしないが、奏に続いてプールに入る。

翔哉は荷物番をすると言って、シートの上で寝転がっていた。



 「ははっ!冷たー!」


 「奏ちゃん!そんなに早く泳いだら人にぶつかるよ!」



奏のテンションが上がり、人が大勢居るプールの中を勢いよく泳いでいく。

そんな奏を咲希は慌てながら注意する。

そんな2人を見て泰志は、昔の光景を思い出す。

ブランコを加速させて楽しむ楓を、危ないと止める咲希、まるで姉妹のように仲が良かった。

泰志は、本人も気付かぬ内に笑みが零れる。

すると、泰志の顔面に勢いのある水がかかる。



 「なーにニヤついてんだ〜」



奏が泰志に向かって、手で水を打ってきていた。



 「……やってくれたな」


 「辛気臭い顔してないで、もっと楽しむよー!」



夏の日差しが照りつける中、奏の叫び声がプールサイドに響き渡った。

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