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フォニックス 白雪の戯れ  作者: ことこん
第二章 天才、それは無限の道
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第三部 別に

 ゼノはプリンとスプーンを持って中庭に出て行った。私は後をそっと尾けてみることにした。ゼノを攻撃して、プライドを傷つけたのも私な訳だし。

「……甘い」

ゼノは中庭の芝生の上に座り込んでプリンを一口食べた。それからは一瞬で食べ終え、容器を舐め始めた。そんなゼノの背後に、シンが近付いて来た。プリンに夢中だったゼノも流石に気付き、プリンの容器から顔を離した。

「こ、これは別に、仕方ないから食べてやっただけだ」

と顔を赤くしながらもシンにスプーンと容器を差し出した。シンはそれを受け取ると、ゼノに背を向けて、

「別に、俺はお前が好きでやった訳じゃない。作りすぎただけだ。……食べたきゃ自分で作ってみろ」

シンもまた赤面していた。

シンが中に入って行くと、ゼノは座ったままじっとしていた。

もう、大丈夫だろう。私も中へ入って行った。


 翌朝。ゼノは無言で風呂場に行き、(男湯の様子は知らないが)存分に洗われた様だった。そのまま急ぎで用意した部屋で寝かせた様だが、シンとゼノが一向に起きて来なかった。

「ライトならまだしも、シンが起きてこないのは珍しいな」

とはいえ、情けをかけるつもりは無い。叩き起こす事に変わりはない。

意を決してシンの部屋に入ると、驚くことにシンがゼノを抱きしめながら寝ており、ゼノは捕えられたまま動けなくなっていた。

「おい、助けろ!」

「人にものを頼む態度じゃない」

「……助けて、下さい……」

私はテールハンドでシンをベッドからつまみ出し、床に置いた。

「痛っ!おい!」

シンは随分と機嫌が悪かったが、ゼノは胸を撫で下ろしていた。

「どうしてこうなった?」

ゼノが先に口を開いた。

「別に、トイレに行ったら間違えただけだ」

それにシンも続き、

「別に、俺は故意じゃない。寝相だ」

などと言っている。

「とりあえず、シン。ちゃんと起床時間守れ」

「へいへい」

なんだか、反抗期の子供を二人育てているみたいだ。


 朝食はゼノもしっかり食べたが、日の光が駄目なようで、食べ終わると部屋に籠ってしまった。

日焼け止め、買っとくか……って、なんで私がこいつの面倒を見ているのだろうか。

などと思っていると、玄関のドアがノックされた。丁度ドアの近くにいたツーハが開けると、知らない人物がそこにいた。

長い黒髪、黄色の目。その人物は、一礼して、こう言った。

「初めまして。フォニックス。私は、放浪人のイムだ。其方らに、新たな可能性を提示しに来た。選ぶも選ばぬも、可能性の一つだ」

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