第二部 余計な事
「お前は……」
と私が思わずそう言うと、(見た目だけは)ゼノは私に近寄った。
『その通りだ。俺はあいつにレッドと呼ばれていた、守護精霊だ』
守護精霊という存在は初めて知ったが、レッドである事に間違いは無さそうだ。
「ソウマから乗り替わる事も出来たのか」
『俺は別にそうする気は無かったが、あいつは一人でやる気らしいな。俺も一人じゃ生きられないから、こいつの所に来た』
淡々と話すレッドだが、私からしてみればレッドが急に遠くにいる様な気がした。
『精霊って言っても、同じ生命体だ。特に優位な存在って訳でも無い。そう気後れするな』
「そうか……」
『ああ。兎とか、馬の国には動物みたいに普通にいるぞ。たまに異形のものが人を襲ったりするが』
「ええ……」
精霊といえば、蝶のような羽を持って美しく飛んでいるイメージだったので、サンタさんはいないと教えられた時の様な気持ちになった。
『じゃあ、こいつをよろしくな。俺は長時間入れ替われない』
すると、急に妖気が変わった。
「余計な事を!」
『お前の守りをするのが俺の役目だ』
別にゼノもレッドの存在を知らなかった訳でも無いようだ。
とにかく、レッドの助けもあって、私たちは無事にゼノを連れ帰ることが出来た。
「おい、食べないのか?」
とライトが言うように、ゼノは一向に晩飯を口にしようとせず、終始そっぽを向いていた。
「無理矢理連れて来たし、仕方ないだろ」
と私は言うが、何故かシンまで不機嫌だった。
「こんなガキ、ほっとけ」
と言って一人先に食べ終わり食器を厨房に片付けに行った。
毒が入っているとでも思っているのだろうか。
「ほら」
とスインがスプーンでチャーハンをすくって食べさせようとすると、手でスインの手を弾いた。宙を舞ったチャーハンはツーハがパクリと食べた。
「姉さん!大丈夫?」
アインまで不機嫌になってしまった。
これは良くない。しかし、私にそういう能力は無い。ライトすら何も出来ずにいるくらいだ。
私たちが顔を見合わせながらも食べ終え、ひとまず夕飯を片付けた後も、ゼノはそっぽを向いたままだった。
お風呂を入ろうかという時間になった時、シンが突然ゼノに近付いた。
かと思うと、スプーンと共にコップを差し出した。
「ん」
シンからの言葉はそれだけだったが、ゼノはそれを受け取った。
甘い匂い……プリンだろうか。後でやってきたアインはニヤニヤしながらその様子を見ていた。プリンを冷やしていたのかもしれない。
「案外、良いとこあるじゃんね」