プロローグ 止められるものなら止めてみろ
どーも。フウワだ。
私たちはボスらしき人物の所まで辿り着き、点いた照明によって姿も拝むことが出来た。
服装は一般的な普段着だったが、明らかにシンよりも年下で、真っ白な髪や毛、その中で異彩を放つ真紅の目。
「俺を倒しに来たのか!」
と耳をつんざく様な大声で質問したかと思うと、一瞬で蹴りが飛んできた。私はそれを左腕で防いだが、当たった部分が熱い。
「おらっ!」
今度は右に来そうだったので、テールハンドで防いだ。そいつは悔しそうに地団駄を踏んでいた。
かと思うと、今度は高速で連続蹴りをかましてきた。
段々テールハンドが消耗して来て、遂には先端が千切れてしまった。
「見た目の割に、やるな、お前」
「お前じゃねえ!ゼノだ!」
ゼノ。様々な意味のある言葉だ。まぁ、どの意味から付けられたのかは別に知らなくても良いが。
とにかく、ゼノは蹴りだけで私だけでなくライトやエントも同時に相手にしながら互角に戦っていた。
「もっと頭使え」
その時、シンが黒い手でゼノを拘束した。
「要らねーよ!そんな事!」
しかし、ゼノはするりと蛇のように抜け出してしまった。
「なっ……」
シンがこんなに驚いている顔は中々珍しい。
「俺を止められるもんなら止めてみろ!」
と言ったゼノの頬を、スインが放った弾丸が掠った。
「危な!」
しかし、感情が態度に出やすいタイプの様だ。まぁ、ガキだしな。
「ここか!」
ゼノが蹴りを入れた所には透明になっている筈のスインがいた。ゼノの蹴りはアインが受け止めた。
私たちの特殊能力が全然通用していない。このままでは、負けてしまう……じゃないな。ソウマだって、命懸けで終わらせに行ったんだ。私たちが一人のガキに負けました、なんて、許せる訳ないだろ!
私はゼノと同時に蹴った。お互いの脚がぶつかり合うと、鈍い痛みが脚に残った。
「お前の蹴りは、こんなもんか?」
でも、こんなの、ソウマが、いや、ソウマたちが負って来た深い傷に比べれば……!
「戦士、舐めんじゃねぇ!」
私は気付けば空高く跳び上がっていた。しかし、それで良い。
「ブローバースト!」
私は自分でも驚く程高速で地面まで突っ切った。
私が立ち上がると、技を受けたゼノはゆっくり立ち上がりながら私を見つめた。
「なんだよ」
ゼノはポツリと呟く。
「さっきの技、なんだよ!俺が力で負ける訳無い!」
と私に詰め寄るが、突然、
『俺に代われ』
と声がしたかと思うと、急に目つきと声が変わった。
『久しぶりだな、フォニックス』