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フォニックス 白雪の戯れ  作者: ことこん
第十二章 ショクザイ
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第三部 クモノイト

 「……でも一向に、“あの力”が溢れて来ない。

やっぱり、そうなるよね。

あの力を“食材”するのには骨が折れるよ」



 私、イムがしばし立ち尽くしていると、誰かが近付いてきた。

別方向から、二人。

「イム様、濡れてしまいますよ」

と、やって来たイネイが話した。

しかし、そこにはいつもの元気の良さは無く。

佇んでいる、という表現が似合っていた。

緩やかに上げられた口角や、淡い光を放つ瞳からは、感情を読み取れない。

「……どうしましたか?

──ああ、ギルド様の件、もう知ってますよ。

だって……」

イネイは一人でに話し始めたかと思うと、右人差し指を立てる。

指先から妖力で紡がれた糸が伸びていた。

「これ、ツムギさんの技なんですよ。“元々”」

「……意を得ぬな」

イネイの微笑みが、どんどん不気味なものに思えて来た。

「“地獄からの帰り道(クモノイト)”。今の状況にピッタリだと思いませんか?

こうやって、死後の魂を繋ぎ止めておけるんです」

と、糸を指にしまっていく。

すると、ギルドの奥深くに溜まっていたであろう力の集合が感じられた。

ギルドの魂もこの一部になってしまったのだろうか。

「……これをどうする気だ?」

イネイは目線を魂にやる。

「それが、困ってるんですよね。勿論私は扱い切れませんし……」

丁度近くを野良犬が通ると、魂がスッと入っていき……耐えきれずに卒倒した。

「なので、ストキ様ともお話ししたいのですが……」

被せ気味に、上から人が降って来る。当然、ストキだった。

普段のポーカーフェイスを崩すことは無かったが、大方の状況を把握すると、手を合わせて暫し黙った。

ギルドの魂がフヨフヨと一回転した後、ストキは口を開いた。

「……そうですね。

イネイさん、あなたはどこまで出来ますか?」

話の意図が読めない。イネイには、私の知らない力があると言う事か。

「まだ亡くなってからそんなに経っていないので、ほぼ元通りに出来るかと思います。

どうしても、不自然さは拭えませんが……」

もしかして、いや、ほぼ確定だろう。

死者の蘇生。

無論、禁術と言わざるを得ない。

……だが、プロットを守るには、こうするしか……無いのだろうか。

ストキはゆっくりと口を開く。

「……本当は、このままの方が良いに決まってます。しかし……今ギルドの魂が放たれたら、大変な事になるでしょう」

それもそうだ。

だが……


それは、正しい事なのか?


ストキは初めて表情を見せた。

開いた瞼からは、浅葱色の瞳がのぞいていた。

下唇を噛みながら、俯いていた。



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