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フォニックス 白雪の戯れ  作者: ことこん
第十二章 ショクザイ
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プロローグ 忍び寄る天使

 死とは何か。


 勿論、体が機能しなくなった事、と言えてしまう。


 しかし、私たちには第二の死がある。

「忘れられること」だ。

それは、一人の人間の“物語”が終わりを告げるという事と同義である。


これはフォニックスたちが旅立った後の、秋のこと。


 ……体が重い。

もう、抱え切るのは限界とでも言うのか。

私、ギルドは重い体を引き摺りながらも見回りをしていた。

真夜中とはいえ、月がある。

それを頼りに、歩き続ける事、五分。

「──やぁ」

始め見た時は、幽霊かと思った。

本当に、足が無く、浮いていたから。

ただ、どこかで聞いたような声だった。

「久しぶりだね」

相手は細めていた目を見開く。

虚ろで、何も写さない目だった。

「あの時キミに邪魔されてから、ボク、頑張ったんだから」

相手は首から下が布で覆われていた。

しかし、そこから禍々しい妖気が溢れている。

スルスルと、蛇のように動く腕が何本も出て来た。

「忘れちゃった?元エムル、今はキリュウだよ!

まぁ、教えてもそんなに変わらないか」

普通の人に紛れていた面影などなかった。

幼い子供のあどけない顔がくっついているだけの、妖力の集合体。

もっと端的に述べれば、化け物。

「キミは、ここで死ぬんだから!」

キリュウは笑顔を浮かべながら、腕を一斉にこちらへ伸ばした。



 翌日。

フォニックス本拠地。

私、イムはここに居候している訳だが……どうやら、向こう側も動きがあったらしい。

禍々しい、生ごみを集めた様な妖気。

それが、この街を通った跡がある。

本来なら、すぐに動きたいが。物事には優先順位というものがある。

イネイを殺させる訳にはいかない。よって、現場へ向かうことは出来ない。

「イムさん?どうしました?」

イネイは、私が窓の先を睨むのを見て、尋ねる。

「……いや、何でもない。今日は少し曇っている様だな」

そこにいるならともかく、妖気の跡だ。イネイらには感じられないだろう。

私の言葉を聞いて、ウーベイが

「午後から雨らしいです」

と、パソコンから目を離さずに返す。

今、ここに住んでいるのは、私、ウーベイ、イネイの三人に加え……。

「おはざーっす」

ツーハの弟だというシャラト。

後は穀物屋敷の者がたまに出入りするくらいだろう。


何気ない、静かな朝。

しかし、やはり。

“プロット”とは違う風に、物語が動き始めている。

だが、私のやる事は変わらない。

物語を歪める、異物を排除するだけだ。

「すまない。その午後から出かける」

と言うと、イネイは

「分かりました!」

と元気良く返事をした。

 

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