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フォニックス 白雪の戯れ  作者: ことこん
第十一章 交差する人生
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第四部 追憶

 ゼノはわがままだし、危なっかしい。その上、生意気だ。

 でも、なんでだろうな、不思議と、迷惑だとか、疲れるとか。

そう言った感情を自分からあまり感じない。


 休憩を終えると、俺が言う前にゼノは帰路についた。

「……今日は、全然修行出来なかった」

と、ぽつり。

やっぱり気にしていたらしい。

真っ白なまつ毛が伏せられる。その表情に、妙な既視感があった。

「その代わり、ゼノは明日も頑張れるだろ?」

「それは、全員そうじゃねーか」

「……まぁな」

俺はどうやら、慰めるのが下手らしい。言葉が続かない。

「まぁでも、俺が突っ走ってこーなったからな、今回は謝る」

「……なんだそれ」

あまりの偏屈さに、思わず吹き出してしまった。

「人が謝ってるのに、どーゆー態度だよ!やっぱ謝んねーぞ!」

それを言うなら、そちらこそ態度は悪いだろう、と心の中突っ込むが……もう諦めている。

ゼノはそっぽを向いた。まだ小さい体を、めいいっぱいに捻っている。

だが、歩みは止めない。

全く、怒っているんだかいないんだか。

互いに無言だったが、別に心地悪くは無かった。

向こうも放っておいて欲しそうだったしな。

しばしの沈黙の中、俺は、徐に遠い、遠い記憶を思い出した。


 『おーい、遅いぞー!』

これは自分の声。相手の声も、顔も忘れてしまった。ただ、この日の雨の匂いは、よく覚えている。

ぼんやりとした記憶。

ただ、はっきりしているのは、俺を後ろから追いかけていたそいつのまつ毛が美しかったこと。

まだ、そんなにひどく忘れた訳では無いらしい。ただ、故郷を捨てた自分にとって、この記憶に意味はないのかもしれない。


「い!……おーい!聞いてんのか!」

ゼノの声で、ハッとした。

どうやら、随分と夢中で記憶に浸っていたようだ。

もう家に着いてしまった。

「何だよ、急にボーッとして。早く行くぞ」

「ああ」

まさか本当に一言も交わさず帰って来てしまうなんて……反省しなければいけない。


 帰ると、クオが料理をしてくれていた。

「ありがとう、助かる」

そう話しかけると、クオは目を細めた。

「なんか、疲れてる?たまには気を休めないと」

「休まるも何も……反射で心配してしまうんだ」

「ふぅん」

クオはエプロン姿のまま近づいて来た。

「リーダーってさ」

「何だ?」

「……やっぱいいや。面白く無いし」

と思えば去っていく。よく分からない奴だ。

ただ、疲れた。仮眠を取ろう。

俺は自室に入り、ベッドに身を預けた。

しかし。

「リーダー。今日の依頼の会計なんだけど」

フィラ。タイミングが悪すぎる。


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