第五部 真
その後、なんとか振り切ったが、翼が若干焦げている。問題は無さそうだが。
「にしても、すごい雷だったな」
「んーまーねー。確実に王族の血は引いてるでしょ」
「……やっぱり、王族の方が強いもんなのか?」
「そんなことはないよ。鍛えた時の成長速度が違うってだけ。だって技神にも王族じゃない人がいる訳だし」
「……」
それでも、腑に落ちない。ずっと考えていたことだが、どうして、こんなにも違ってしまうのだろうか。
「というか、才能の面で言ったら、フォニックスたちはそこまで高く無いでしょ、一部を除いて」
「まぁ、それはそうだが」
「それでも、ここに来て修行してる。これが答えなんじゃないの?」
「……そう、なのかもしれないな」
まぁ、そういう事にしておくか。
「さっきから随分と素直じゃん」
「こっちは結構真剣に答えてるんだが」
「あ、そうそう」
「?」
「教えなかったらやらなくて済むのかもしれないけど、シン君自分で気付きそうだから言っとくね」
「何だよ」
「確実に強くなれるけど、確実に破滅する方法」
「……そんな奴……いる……な」
「見たことあるの?」
「ああ……」
俺はざっくりとレナのことを話した。
「うーん…ちょっと違うかも?」
「何が違うんだ」
「オレの想定してたのは“契約”で強くなるパターン」
「契約?」
「そそ。詳しい事は知らないけど、“脚本家”と契約を結ぶらしい」
「で、内容はどんなのなんだ?」
「その人にとって一番大切なモノ。でも、自分以外はダメらしい。自分の寿命とか、体の一部とか」
「……契約した奴って見ただけでわかるのか?」
「分からないらしいね。ただ契約で手に入れた能力を使う時、妖気が黒く染まるお陰で見えるらしい」
「本当に、禁忌の術、って感じだな」
それにしても、脚本家?なんでそんな、劇みたいな……。
「そそ。お、そろそろ家だ」
脚本家がいるってことは、当然大道具や小道具を作る奴、照明係、演出家、プロデューサー、勿論演者……実際の劇はもっといるのかもしれないが。
じゃあ誰が誰なんだ?
俺は演者という自覚なしに演者をやっていて、これは、この世界は全部……
劇なのか?
「着いたよー」
誰かが、これを客観的に見てるって事か?喜劇として、あるいは悲劇として。
だとしたら、俺の感情すら作り物で、見透かされているのか?
「なぁ、どこにいるんだ?俺たちを見ている奴は」
「すべての人間の一生は、神の手によって書かれた童話にすぎない」
ハリス・クリスチャン・アンデルセン




