第三部 ふたりの世界
「はぁ?」
あり得ないだろ!なんでわざわざ飲み込まれに!?
俺は慌ててツーハに続いた。
なんだかヌメヌメしていて、筋肉の動きで奥へ奥へと押されていくと、ツーハを見かけたのでそこに足の爪を突き刺し留まった。
「お前な!こーゆー事やんなら事前に教えろ!」
「じゃあ、今言う」
「は?」
「ここからこうげきする」
次の瞬間、ツーハが煌めいた。またあれか?
俺は思わず目を閉じた。
気づけばウナギはツーハのいたところを中心に砕けていた。
俺は眠っているツーハを見つけたので、そのままおぶって帰ろうとしたが、すぐに起き出した。
「んー」
「おい、大丈夫か?」
目覚めたツーハはケロッとしていて、すぐに飛び始めた。
「だいじょーぶ」
こんな様子を見る限りは、普通の少女だ。それは間違いない。
でも、あまりに力を持ちすぎてる。家柄か、才能か。どちらにしても、何か引っ掛かりを感じるし、この力を野放しにしておけない。
「どーしたの?」
子供だからか、こいつだからか。比較対象がいないから分からないけど、心の機微に鋭いみたいだ。
まぁ、大人に警戒されながらの子供時代なんて、味わっても何にもならないしな。とりあえず、こいつの前では考えないようにしよう。
でも、警戒を解いてそれこそ市街地で暴れられるのは困る。特に本人が。
「ツーハ」
曇りを感じさせない瞳がこちらへ動く。
「ん?」
なんだろうな、話しかけたら絶対に返してくれる気がする、この信頼感というか、安心感?全世界の人間がこんな態度で接し合えたら、多分争い起きねぇな、って感じ。
「どしたの?」
「……敵わねぇな」
俺がそれだけ言うと、ツーハは首を傾げはしたがそれ以上何も聞かなかった。本当に、鋭い奴だ。
でも、このまま黙って歩くのも性に合わない。かと言って、あんな話の切り方をしてしまってなんだか気まずいな……。
やっぱ、こう言う時は……。
「どっちが飛ぶの速いか、勝負しねぇか?」
ツーハの目が光り輝く。
「うん!」
多分、飛べる人も少ないからこうやって競う事も無かったんだろうな。
俺とツーハは目視で横一列に並ぶ。
「位置について」
俺は翼を出す。
「よーい」
ツーハは空を見つめる。
「ドン!」
俺たちは同時に飛び上がり、同じ高さで前進し始めた。
その日は、多分俺の人生の中で一番楽しく飛んだ日だった。
一方。暗い部屋に、猫の王、ギーヨが一人。
ギーヨは読んでいた分厚い本を閉じると、静かに部屋のドアを開け、ネクタイを正した。
「ここが、正念場ですね」
お久しぶりです。ことこんです。
まずは、何の説明の無い突然の休載にお詫び申し上げます。もし打ち切りを心配された方がいらっしゃったのであれば、大変申し訳ございません。
ここ半年程は、私事で休載させて頂いておりましたが、再開という形にさせて頂きます。しかし、以前よりは投稿ペースが落ち、おそらく週一で不定期な投稿となってしまうと思います。ご了承下さい。
フォニックスシリーズは、五つの編を予定しており、ようやく折り返し地点に達しようとしています。最後までお付き合い頂けるとありがたいです。
最後に、最初の「運命の始まり」編のPVが一万、ユニークアクセスが五千を突破した事の感謝を述べさせて頂きます。
”時の館の主人“の正体、分かりましたか?