第二部 焼き尽くす
しばらく沈黙があったが、ミヒューが口を開いた。
「ねぇ、今の全力じゃないでしょ」
ツーハは頷く。
「ぼうしあったし」
昨日の様子を見るに自分勝手に動いているわがままな奴という感じだったが、意外にもこう言った分別はあるらしかった。
「今度は、あなたが戦ってあげなさい。もう私の出来ることは無いわ」
俺はミヒューに代金を払うと、ツーハを連れて出て行った。
やって来たのはどれだけ暴れても問題ない、一面に広がる砂浜だった。
「ここなら、全力出しても良いぞ!」
「わかった!」
俺に対する遠慮は無いんかい。まぁ、そういう役目だから良いんだけど。ツーハはそれでも俺から数メートル離れて光った。俺が思わず目を瞑ったかと思うと、全身が焼かれているような心地がした。しかし、すぐに消えた。熱さが全身を通り抜けて行った感じだ。
燃える程じゃないと思って目を開けたら、ツーハの周りの砂が熱せられたのか景色がゆらゆらしており、海水が一気に蒸発したのかジメジメした空気になった。ちなみに、俺の隣を歩いていた蟹は美味しそうに焼けて赤くなっていた。
どうやら、俺以外は相当影響を受けていたようだ。
せめてもの償いとして弁当と一緒にさっきの蟹を俺が食べ、周りがまだ暑いので近くの店で涼んでいた。
「すずしー」
「誰かさんの技で暑かったなー」
「レオンがしろって言った!」
「……たし……かに、そう、だけど……」
まさかな、まさか。こんだけ派手にやったら、フィラに怒られるのは間違いない。まぁ、不可抗力って奴だよ、これは。
もうしゃーないし、午後からはあっち行くか。
「いどうばっかり」
「うるさい!」
俺とツーハは家に戻りつつ川に発生した奴を倒すことにした。
「でっかーい。うなぎ?」
「ウナギ?あれって蛇じゃないのか?」
「むち」
「やかましい!」
まぁ、ウナギ?は民家を丸呑みしては川に戻っていた。水中は俺もあまり得意じゃない。
「とりあえず川の水なくしちゃおう!」
とツーハは勝手に川岸までおり、えっちらほっちら水を手ですくって外へ出していた。さてはあいつ馬鹿だな。
というかウナギにガッツリ見られてる。もう飲み込むモーションに入っている。流石に飲み込ませる訳には行かない。俺は出てきた頭に向かって炎を吐いた。しかし、全く効いていない。俺は急降下し体重を乗せてウナギに尾を叩きつけた。
ウナギはそれでも俺に気を逸らさない。というか表皮が硬すぎる。
流石のツーハも気づいて……ウナギの口へ飛んで入った。