第四部 姉さんなら
皆は一斉に走り出したが、私は少し留まった。私は近接攻撃が出来るようになっただけで、やる事を大きく変えるつもりは無い。
ライトさんとエントは一人と技を出し合って攻防を繰り広げでいた。
フウワさんは他の一人と拳と拳の勝負を繰り広げ、なんだか傍で夕日が沈んでいそうだった。
シン君は相変わらずどこに行ってもその強さは変わらず、相手を相当やりこめていた。
姉さんは透明になったっきり動向が全く掴めていないが、私も姉さんの心配をしている場合ではない。私と同じ様に、一歩退いた所でこちらの動向を伺っている人がいた。
わたしは薙刀を構えたが、向こうは特に攻撃しようとしてくる気配が無かった。だが、そういう時こそ油断は出来ない。足手纏いになるなんて戦士としての最低条件も満たせていないだろうし。
「やぁ」
突如、後ろから声がしたので、振り返っても誰もいなかった。その相手も動いていなかった。しかし。
「君は攻めて来ないけど、新人さんとか?」
と会話は続いた。しかも、笑い声までしている。
普通に考えれば、こんなことありえないだろう。
しかし、この世界には、そんな『ありえない』を『普通』にしてしまう力、“特殊能力”がある。
「テレパシーか何か?」
「んー、声だけ飛ばせるって感じかな」
そして、私にも“嘘見抜き”という特殊能力がある。
「技とかも?」
「さぁ?」
「ふーん……」
私はその相手に向かって突進した。ぐんぐん相手との距離が近づいて行く。そして、私が薙刀を思いっきり振りかぶった時、私の背に向けて炎が放たれた。
「ありがと」
私は薙刀をそのまま振り下ろした。
私は、何故あの技を受けて平気なのか。
答えは簡単だ。
「大丈夫やった?」
姉さんが、驚異的な狙撃力で炎技を私にダメージを与える事なく打ち消したのだ。
「うん、姉さんならやってくれるかなって」
「アインも、伝染っとるんちゃう?ソウマ菌」
「……」
言われてみれば、そうだった。
結局、四天王も特に大きな怪我も無く私たちは倒した。
そのまま進んで行くと、大きな倉庫の中へと道が続き、玉座に誰かがどっかりと座っていた。暗いのではっきりとは見えなかったが、シン君は超音波でよく分かっている様だ。
「随分とガキだぞ」
と言っているし。確かに、体はそんなに大きくないように見える。まぁ、ソウマさんみたいに別に大きい=大人っていう訳じゃない人もいるけど。
「ガキ?なんだ!その呼び方は!」
その声の主が玉座から降りると、一斉に照明が付いた。