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フォニックス 白雪の戯れ  作者: ことこん
第七章 冷徹
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プロローグ 研究所

 スインやで。

私と師匠、フィラは、森と森の間にある広場にやって来た。

師匠はそこに着くなり私を振り向きざまに見て、

「僕が君を弟子にしようと思ったのは、教えたいことがあったからじゃない。

知りたい事が、あったからだ」

師匠は私を切り株に座らせ、自分も隣の切り株に腰掛けた。

知りたい事、な。大方、研究所(あそこ)の事やろう。

「僕は、一番古い記憶では、液体の中に入れられていて、その液体はガラスに囲われていた」

「培養液やね。多分、細胞一つから作られたんちゃう?」

「やっぱり、そうかな。僕には親の記憶も、へそも無かったから。

僕はそこから逃げ出したけど、当時のことは知らされてる?」

「今度はこっちが質問する番や。なんで私があそこ出身やと?」

「簡単だよ。経歴を見れば、違和感なんてすぐ分かる」

確かに、エント君にバレて勘のいい師匠にバレない訳が無かったか。

「そうやったか。じゃあ、質問に答えるわ。

十一年前の事やんな。つまり私はもう研究所におらん」

「じゃあ、僕がいつからいたかも?」

「八歳までの記憶は無いからなぁ。でも、十三歳の時に両親が光逆戦争で死んだ時、私が研究所出身やって教えて貰ったわ。アインは知らんらしいけど」

「そっか」

「でも、師匠が逃げたのは丁度その頃やんな」

「師匠って呼ばないで」

「ええやん。でも、九、十歳の記憶なら。そん時は研究所に通っとるだけやったけど、培養液なら見たことあるわ」

「それで?」

「丁度小さい男の子を見かけた様な気が……。でも、師匠とは妖気が違うんよな。見た目もぼやっとしか」

「……もし、それが僕だったとしたら?」

「でも、妖気が違うなんて、ありえ……」

何を言っとるんや。あるやんか、人の妖気が変わる事が。

ソウマ君は人格が変わると妖気も変わっていた。

「いや、やっぱあるわ。誰かに体を乗っ取られとったらあるかも」

「成程。ありがとう。後は自分で考える。じゃあ、練習を始めようか」

話を終える頃には、日は高く上っていた。


 私がやったのは、基本的な運動や。

でも、私みたいな運動音痴には堪える。持久走は一キロメートルでもう走れる気がしなかった。

師匠は何も言わんかったけど、多分呆れている。分かってはおったけど、やっぱり私に運動は向いてない。

「あっかんわぁ。全然体が動かん」

と私がぼやくと、師匠は

「動く動かないの話じゃない。大事なのは動かすか動かさないかだよ。まぁ、無理しすぎて壊れてもそれはそれで僕が怒られるだろうけど」

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