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フォニックス 白雪の戯れ  作者: ことこん
第六章 ミステリアスでもいい人
29/49

第四部 集中

 「はい、じゃあ始めるね。ありがちな遊びだけど、もうすぐみんな帰って来そうだし」

クオと家に帰って来た私は、クオにコインを一つ見せられていた。

「知ってると思うけど」

クオはそのコインを逆さにした紙コップで隠し、その隣に全く同じ紙コップを置いた。

「これで、コインの入ってる方を当てるってやつ。行くわよ」

クオはゆっくりと入れ替える。向きを時々変えてみたり、やりかけてやめることはあったが、全く問題ない。

しかし、少しずつスピードが上がってきた。これではフェイントに気付けない。でも、やるしかない。一瞬でも気を抜けば、途端に分からなくなってしまうから。

「テレビっと」

クオは一瞬でリモコンのボタンを押し、テレビをつけた。しかも、大音量だ。

集中。こんな事で崩されたくない。

「よいしょ」

クオはきつい匂いの香水を振り撒いた。

その後も、五感を妨害するような事をされ続け、かれこれ十分くらいになった時。

「どっちでしょう?」

右かと思ったが、今風圧を感じた。言ってる間に移動させたな。

どっちだ。左に移動させてるか、そのままか、ぐるっと一周させたか。

こんな事なら、声が聞こえた時点で気を抜かなければ良かった。でも、私は私を信じる。

「右」

「……」

クオは突然姿を消したかと思ったが、クラッカーを持って戻って来た。

「正解!」

クラッカーから飛び出した紙吹雪が私にかかった。

「最後の風圧にも騙されなかったのね。流石だわ。今日はここまでにしましょうか。明日は二十分ね」

成程。こうやって集中力を上げていくと言う訳か。

それにしても、更に疲れた。私はソファに座り、背もたれにもたれた。

「そのままいて良いわよ」

とクオは台所に行き、ペットボトルを取り出した。

「みんなが来るまで休みましょ」

クオは自分と私の分の炭酸水を用意し、私の隣に座った。

「突然だけどさ。フウワちゃんって、彼氏いるでしょ」

私は炭酸水でむせた。薄々気づいていたが、クオはそう言う系の話が好きなんだろう。

「なんで?」

「その反応はそうって事かしら。なんとなく、女の勘よ」

クオはローテーブルに頬杖をつきながら私を見る。

「いいじゃない。楽しんでおきなさい」

「まぁ、今は別の所にいますけど」

「もしかして、名簿にいた人?」

クオに完全に遊ばれていると分かっていても、反応しないなんて出来ない。

「いいなぁ。私も、純粋に誰かを好きだって思ってみたかった」

急に暗い顔になったクオだったが、次の瞬間先程の顔に戻った。

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