第三部 見えない拳
一時間後。昼飯を済ませた私たちは、最初に戦った時に使ったバトルコートへやって来た。
「私のとっておき。よく見ておいてね」
クオはコンクリートの塊を置いた。そして、じっとそれを見つめたかと思うと、カッと見開く。それだけだった。それだけで、コンクリートの塊は砕ける所か粉になってしまった。
「この技、人に見せるのは初めてなんだけど、あなたの答えを聞いたんだから、応えなきゃってね」
正直、私の答えがそれ程良いものには思えないが、クオからしてみれば良かったのかもしれない。
「でも、さっきのじゃ」
「分かってるわよ。あれだけで完璧に理解して真似できたら一年かからな「いや、違くて」
「さっきのじゃ、こういったただの物なら壊せても、妖気を含んだものは壊せないんじゃ」
「どうして、そう思ったの?」
「妖気を衝動波、と言ってもほんの一部、対象に向かっている物だけですが変えて壊していたからです」
「……あなた、私が思ってるよりかは勘が良さそうね。その通りよ」
「やれるかどうかは別の話です」
「あはは。理屈が分かったら後は感覚を掴むだけよ。あと、敬語じゃなくたっていいのよ」
その後、私は妖気を衝動波に変える感覚を掴むため、実際に受けてみる事にした。
「うっ……」
最初はクオに向けていた前の皮膚がピリピリする感じだったが、それが後ろに伝わっていく。更に、ズンっと体が一瞬だけ重くなった。
「どう?」
「もう一回」
「あんまりやり過ぎると体に悪いわよ?」
「あと一回だけ」
もう一回、確認したら、あるいは。二回目も同じ感覚だった。
「一回、やってみる」
「じゃあ、レンガ置いとくわね」
私は大きく深呼吸をし、レンガを見つめた。目がレンガの小さな傷を捉えられるようになるまで。
そして、体から出ている妖気をグッと堪える。これが難しい。方法が違うかもしれない。
じゃあ、あのレンガをテールハンドで壊すイメージで。動かずに頭の中で構え、一気に殴る。
見事にレンガは割れたが、粉々とまでは行かなかった。
「私とは方法は違ったけれど、そっちもそっちで応用すれば見えない拳になるかもね。それに見合った集中力も必要になってくるかもだけど」
「ありがとう、ございます」
成功したらどっと疲れがやって来た。確かに、集中力が肝になってきそうだ。久しぶりにうなぎの肝吸い……じゃなくて。絶対疲れてるな、私。
「ちょっと休憩したら、集中力をあげるのをがんばりましょうか」
私は頷き、その場に座り込んだ。




