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フォニックス 白雪の戯れ  作者: ことこん
第六章 ミステリアスでもいい人
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第二部 暴走

 市街地は閑散としていて、奇妙なくらい静かだった。

さらにクオに付いて行くと、半壊の建物が見られるようになり、全壊の建物が見えてくる事には巨大なハエが眠っていた。そう、ハエが。

「ハ、ハエーーー!」

と思わず叫んでしまい、ハエが起きてしまった。ハエは轟音を響かせながら上空へ飛び立とうとしていた。

「さ、行きましょう」

と言ったクオに手を引かれるままに、私はクモの脚に乗った。最悪の気分だ。鳥肌が立つのが自分でも分かる。でも、これも仕事だ。

自分の仕事を選り好みなんて出来ない。分かってる。分かってるけど、体が動かなかった。

「あらあら。落ちたら即死だから、頑張ってね」

ハエは私たちに気づいており、足を振り始めた。

私は一瞬手を話してしまったが、テールハンドで掴み直した。

一方、クオはジャンプで足から背中へと跳び移り、頭に向かっていた。

私はハエの複眼や節がどうしても怖くて動けていない。ああもう、何やってんの、私。

「怖くない、怖くない、怖くない」

私は自分で自分を殴った。

血の味がする。そして、知っている。血の味を感じた私は、違う自分になると。

「パーンチ」

私はハエの複眼をテールハンドで殴った。メリメリと、のめり込む音がしたら離し、もう一回。もう一回。もう一回。目がなくなるまで。

「ふふっ。次は逆だよね」

片目を失ったハエは空中でよろめき始める。足場はもう無さそうだ。仕方ない。私はまだ正常な方の複眼の上に跳び移った。そのまま、テールハンドで複眼を握り潰す。ハエは完全に力尽き、墜落した。


 無事着地に成功したが、まだ昂りを抑えられない。目の前にあるもの、なんでもいい。なんでもいいから、壊したい。

私は衝動だけでクオに跳びかかった。

「あらあら。元気ねぇ」

クオは私を避け、テールハンドを受け止めて掴んだ。そして、そのまま私の腹に一発蹴りを入れた。

「グフッ……」

胃の中身が全部出てくるかと思ったが、ギリギリで飲み込めた。危なかった。

「ちょっとやり過ぎちゃったかしら」

クオは私の腹を心配している様だが、こちらとしては、暴走を止めてくれた感謝しかない。

「ありがとう、ございます」

「あら。どういたしまして。凄かったけど、制御できるようにならないと使えなさそうね」

「……」

「気を落とさないで。あなたの暴走のおかげで、こいつを倒せた訳だし。そこは胸張っていいわよ」

クオは誰かと電話し始めた。

咄嗟の判断で使ってしまったが、確かに、使いこなせればどんなに強くなれるだろうか。

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