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フォニックス 白雪の戯れ  作者: ことこん
第五章 師匠というより兄貴っぽい
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第四部 まだ上がある

 二匹目にして、俺は立てなくなった。

「あ、大丈夫か?」

セイは俺を安全な所に運び、残りを全部やってくれた。


 「なんか、力不足だった」

と俺が言っても、セイは首を横に振る。

「いや、俺、今までちゃんと鍛えて来なかったし」

その時の俺にしては頑張ってたつもりだった。でも、全然足りて無かった。

ここに来て、この事に気づけたのは不幸中の幸いだったのかな。

ルミさんに脚を回復してもらい、帰ろうとしていた時、

「おーい!」

とニアとシンがコウモリの翼で飛んでおり、ニアが話しかけながら降りて来た。

「ありゃ、お前こっちだっけ?」

セイはニアにそう返す。

「ちょっと寄り道しちゃって」

俺はシンを見るが、睨まれただけだった。相変わらず、無愛想な奴。

結局、シンの瞬間移動で帰る事になった。


 夕食の後、兄者がズンズンと迫って来た。やっべ。昨日の嘘がバレた。さて、どうするか。

兄者はわかりやすい程怒っていて、なんか言って来たが、コナさんが仲裁に入ってくれた。ラッキーラッキー。

でも、ダメだった。セイも同じように怒り出し、俺の手を掴んで部屋に連行された。

俺は強制的に本気のホラー映画を見させられた。

もう、二度とこんな目には会いたく無い。

セイと俺はみんなより遅れて風呂に入った。

セイはそのまま部屋に行ったけど、俺は水を飲みに台所へ行った。

電気を付けると、シンが冷蔵庫の隣に座り込んで、俯いていた。表情は分かんないけど、なんか、変だ。

俺は兄者みたいに人の心が分かる訳じゃ無い。でも、話しかけた方がいい気がした。

「どうした?」

「お前には関係無い」

俺は自分用に水を入れたコップを渡した。シンは一気に飲み干し、突き返して来た。ようやく見えたシンの顔は、いつもみたいな険しさは無かった。

「……化け物だった」

シンはポツリと零す。

「今日、俺たちは強い奴にあった。戦った訳じゃねぇけど、もう妖気で確信しちまった」

シンは歯を食いしばる。

「勝てねぇ、って。そいつと俺の差すら、分からなかった」

シンの目が赤くなる。

「……ダセェな。全然、俺は強く無かった」

シンは再び顔を膝に埋めた。

「良いと思うぞ」

「は?」

気の利いた言葉かどうかなんて、分からない。でも。

「届かねぇから、俺たちは上をずっと見てられる。もっともっと、強くなれる」

「なんだそれ」

「俺はそんな奴がいたから、ここまで来れたと思ってる」

「……知らねぇよ。俺は寝る」

シンはそそくさと出て行った。俺はその背中をじっと見ていた。

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