第二部 一つの条件
フウワさんはそうやって笑っていたけれど、内心はまだ整理が付いてないかもしれない。
そんなことを考えていたら、音もなく突然リビングにギルド様が現れた。おそらく瞬間移動だろう。
「お久し振りですね、皆さん。しばらく顔を出せず、申し訳ございませんでした。これからも、この様なことが続くかもしれませんが……」
とは言っているものの、立場は向こうが圧倒的に上なので、責めようもないのだけれど。
ギルド様はソファに腰掛け、ツーハを見やった。
「ツーハさんは、学校に行って来て下さい」
ツーハちゃんは、ぶう、と口を尖らせていたが、ちゃんと準備して行ってくれた。こういう時、成長したなぁって思う。別に血縁関係も無いけど。
それはそうと、ツーハちゃんを見送ったギルド様は話を始めた。
「今回も、いつも通りの依頼です。街を暴力で支配している者がいるらしく、なんとか止めて欲しいとのことです」
ギルド様はピンと人差し指を立てた。
「しかし、私から条件が一つあります」
皆の唾を飲む音が聞こえた。
「ソウマさんが抜けた事は、そこそこの戦力ダウンに繋がるでしょう。なので、今回は街の支配者をフォニックスに招き入れて下さい」
私もそうだが、皆は固まった。まさか、ギルド様の口からそんな台詞が出るなんて思っても見なかったからだ。ライトさんならまだしも。
「よろしくお願いします」
と、皆がまだ驚いている間にギルド様は消えてしまっていた。テーブルに一枚の地図を残して。
シン君はその地図をまじまじと見つめ、私たちは早速準備に取り掛かった。と言っても、ほとんど準備はしてあって、そこに貴重品や水筒や弁当を詰めるだけなのだけれど。
「じゃあ、行くか」
シン君がそう言うと、一気に景色が変わった。
そこは、一言で言えばヤンキーがはびこっていそうな所だった。壁という壁にある落書き、吸い殻を始めとしたゴミ……正直に言うと住みたくはない。
しかし、ライトさんは当たり前の様に足を踏み入れた。皆もそれに続く。
周囲を警戒しながら進んで行くと、殴り合いをしている二人組と、いわゆるギャラリーがいた。
ライトさんがギャラリーの一人に話しかけようとする前に、フウワさんが前に立って話しかけた。
「おい、ここでシマ張ってるって言うのは誰なんだ?」
シマって何だろう?とは思ったが、それは良いとして、その人も言い返してきた。
「ああん?他所モンが何偉そうに口聞いてんだ?」
「私は戦士だぞ」
フウワさんのその言葉で、その人の顔色が変わった。