第二部 弁当って冷たい
俺は一からコナさんに鬼ごっこについて教える羽目になった。
「ありがとうございます。良く分かりました。気を取り直して、自分の課題は良くわかった筈です」
「はい」
でも、やっぱりしっかりした戦士なんだな。
「では、これは私から十分間逃げ切れたら合格としましょう」
コナさんは腰のリボンを外すと、次はナイフを取り出した。
「ここからは、本気の戦いにしましょう」
先程の雰囲気とは打って変わって、俺は無意識に唾を飲んでいた。
「うっす」
コナさんが動き出すと同時に、俺は右に走った。
コナさんは俺を飛び越えて先回りし、右手のナイフを投げて来た。
俺はナイフを避けると、脚に雷を纏わせて突っ込んだ。
コナさんはそれをスレスレで避ける。
かと思っていたら、何かに躓いた。
「おわっ」
俺は何も無いところでこけてしまった。コナさんのナイフが飛んできていた。
まずい。このままじゃ、終わってしまう。
俺は床に手をついた。すると、糸があった。
俺がそれを引っ張ると、飛んで来ていたナイフが途中で落ちた。
一体、何が起こってるんだ?
混乱気味な俺に、コナさんが拍手をしながら近づいて来た。
「まさか、初日に気付かれるとは思っていませんでした」
コナさんは二つのナイフを拾い上げ、俺に渡した。
ナイフの装飾かと思っていた穴に、糸が通されており、二つのナイフは一本の糸で繋がっていた。よく目を凝らさないとわからない程透明だが。
「私は糸属性。この糸は伸縮自在で、私の意思で切れます」
糸がひとりでに切れ、消えた。かと思えば、復活した。
「たまたまっす」
「しかし、ナイフが迫って来ていたあの局面で、床に意識を向けられる人はそういませんよ。案外、冷静なんですね」
「買い被りすぎっす」
あれ、俺、無意識のうちに昔みたいな口調になってる。
「あっ、変な喋り方になってました」
「良いですよ。方言とやらもご自由に。意味が伝われば良いので」
これって、方言判定して良いものだろうか……?
「明日からは、本気でやりましょう。と言う訳で」
コナさんが二つの弁当を鞄から出した。
「昼食にしましょうか。弁当という文化に馴染みはありませんが、リーダーが作ったので大丈夫でしょう」
それから、俺とコナさんは並んで昼食をとった。
コナさんは、「冷たい」と独り言を言っていた。そりゃそうだ。
中身はサンドウィッチだった。リーダーには悪いが、二日目にして白米が恋しくなっているのは俺だけじゃ無いはずだ。
「終わったら走り込みです」




