都市と星光
夜更けに歩いていると星が綺麗に見えることに気づいた。
会社から帰るこの道をBluetoothのイヤホンでTOOBOEのアルバムを聴いていたが、充電がうまくできていなかったようで道半ばで音楽はプツリと途切れてしまった。ラスサビ前の盛り上がりから一転して無音になると足を止めてしまうほどもどかしい。とたんに夜の東京は自動車の走行音と街灯の灯りで五月蝿さが乱雑にTOOBOEの余韻をかき乱す。
テールランプもヘッドライトもぐねぐねと色っぽく腰を振る。思わず灯りのない空を見上げた。眩しさの海から顔を上げて呼吸をするように、目から暗闇を思いっきり吸い込みたかったのだ。街明かりに照らされた夜空は薄い膜に包まれているみたい。しかし、その中にも煌めくものがある。何千万キロも何億光年も離れたところからその光がさやかに訴えかけてくる。何の意味もない光を。注意でも、注視でもない。無音の光。そして、それもまた自らの意思ですらないのだろう。ただあちらもあかりを浴びさられて闇の中に引き摺り出されたものなのだ。
暗闇の中を歩み外側からいろんな言葉や光を浴びせかけられる。薄汚れていくばかりだと思っていたが、しかして同じように、あの星々はどうしてああも絶対的に存在していられるのだろうか。誰に摘まれて夜空から取り外させれるわけでもないし、自分から流星となって遠く彼方に消えていくこともない。彼らは星であるだけ。星として光るが、星だから光らねばならないという義務で光っているのではない。仕方なく光っているのだろう。胸中を暴露しないまま。そして、きっとあちらも私を見ているのだろう。
テールランプもヘッドライトも浴びせられても歩んでる、私の静かな光り方を。