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0:所在地不明-■

 水主軽太は、空を見上げていた。 

 地球と何も変わらない、ただの空。黒くて点々と星があり、たまに雲があるだけの満天の空。

 

 過去の記憶が、喉の骨のように主張してきて仕方がない。彼はこの鬱陶しい感触を夢と思うことにし、上体を起こしてみる。衣類の類と、備品を収納するバッグとは彼の身に着いていた。


 自身が裸ではないと確認した軽太は、改めてこの場を見渡すこととした。

 恐らく、ここはどこかの山道だ。それも、アスファルト舗装すらされてないほどに田舎か、高度に発展していない場所。

 野生動物などに見つかったら即死だろう。軽太はこのような状況には慣れており、今更物怖じすることはなかった。



 適当に人里でも探そうと10分は歩き続けた。やはり人など居ないと絶望しかけた矢先、アスファルトで舗装された場所に出た。一向に車の通る気配はなく、ただただ寒い空気と、霧がかったように暗い闇は健在だ。

 水主軽太は更に歩き続けることとした。緑の葉に山桜に、緑の芝とで、日本で見飽きたものしか目にしていない。地球の別の場所なんじゃないか、と思い続けてしょうがない。

 

 ふと、土に挿された木製の看板がみえる。さっきからブツブツとアスファルトばっか見ていたが、ふと顔が見上がる。


 結論を言えば。水主軽太は、地球上のどこでもない、未知の場所に来たことを確信した。さて、看板の木の朽ち方は日本のそれと大差ない。苔が生して雨に土壌の水に侵され、インクが所々禿げた類の看板は日本の山間で偶に見るものだ。棒の部分は鉄製で、朱茶色の錆に青い塗装、なんてパターンもよく見る。

 問題はその中身だ。矢印が在るべき場所に鳥の足型のようなマークが、日本語の在るべき場所にモンゴル文字のような字が描かれている。

 足型マークで方向を指し示すのは、ポップな案内でなら存分に有り得ることだ。だが今どき、山でそんな洒落た案内をするとは思えない。

 極め付きは、モンゴル文字《《のような》》文字。決してモンゴル文字ではないのだ。

 海外の何処かにあるかもしれないが、こうも日本としか思えない風景のそこにこんなものが在るとは思えない。

 

 彼はここが人知の及ぶ場所だと信じ、僅かに光が仄めく方へ向かっていった。

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