23 ダリウスの選択
不定期投稿です。
宜しくお願いします。
「マルス·スタード卿、フィーネの幼馴染みでもある聖騎士のジャンとカルロは今何処に?」
グレイスが行方不明となり、王宮に呼び出され、聖騎士の関与を疑われたダリウスは、フィーネの護衛騎士をまとめるマルス·スタードを呼び止め尋問していた。
「聖女様に頼まれた事があると言って、出ております。2人がどうかしましたか?」
「いつ戻って来る?フィーネが心配している。」
「私にも分かりかねます。」
マルスはフィーネを守る聖騎士が、フィーネと幼馴染みの者や平民で構成される中、貴族であり、主に王宮とやり取りする場合、その交渉を任せられているのか彼だ。
そしてフィーネの養父のルクスト子爵の息がかかった人間でもある。
野盗を手配したとすれば、この男だが····。
「先日グレイス·タンドゥーラ公爵令嬢がルダリスタン帝国へ向かう途中、野盗に襲われた。その遺体の中に、聖騎士が2名いたそうだ。それが誰か調べるように言われている。」
「遺体を確認すれば誰か分かるのでは?」
「·····魔法により、肉体は灰と化していた。」
「なっ?!」
ガターン
マルスと話している途中で、背後に大きな音が響く。
振り返れば、そこにフィーネがいた。
「灰って、どういうこと?」
「フィーネ·····。」
「灰になったってどういうこと?聖騎士が灰にされたの?グレイスさんに、ジャンとカルロは殺されたの?」
「フィーネ落ち着け。タンドゥーラ公爵令嬢が襲われたんだ。そこに聖騎士服の遺体があった。しかしピンバッジが外されていて、それが誰かは分からない。」
「グレイスさんに殺されたのよ!ああ、ジャン、カルロ·····いやあああああ····」
フィーネはその場で泣き崩れる。
ダリウスは直ぐ様フィーネを抱き上げ、休憩室へ急ぐ。
フィーネは騎士団で治療奉仕を行っていた。
その状況を多くの者が見ていた。
これで、フィーネはグレイスが襲われるのを知っていたのを証明したようなものだ。
どうして、グレイスを·····。
ダリウスに抱き上げられて運ばれながら、フィーネは狂ったように泣きじゃくる。
「眠らせましょう。」
マルスがダリウスに進言する。
ダリウスはフィーネに聞きたい事が色々あったが、今はマルスの提案を受け入れるしかなかった。
ダリウスが同意すると、マルスは詠唱し、魔法を発動させる。
フィーネはそのままゆっくり眠りについた。
それを見たダリウス達は休憩室へ行かず、馬車に乗り、屋敷へと急ぐのだった。
◇
「ダリウス様、お願いがございます。」
屋敷に帰り着き、フィーネを寝室へ運び、メイドに世話を託した所、控えていたマルスがダリウスにそう話し掛けた。
「何だ?」
「フィーネ様を抱いて下さい。」
「は?何を言っている?こんな時に。」
「こんな時だからです。あなたはフィーネ様と結婚されるというのに、まともな口付けさえしていないでしょう?」
ダリウスはマルスが何故今その様な事を言うのか、その意図が分からず言葉を失う。
確かにフィーネには子供にするような事しかしていない。
「フィーネ様の治癒再生の魔法は、フィーネ様自身の気持ちに大きく左右されます。あなたもご存知のはずだ。ここ最近ずっと魔法の発動が上手くいっていない事を。」
「····だがそれは、自身が良くない事をしていると自覚があるからだろう。」
「それは、あなたがそうさせているんです。」
「何だと?」
「あなたはフィーネ様を愛してはいない。フィーネ様はあなたから愛を得るために、悪にも手を染めているのです。このままでは、あの貴重な力は失われてしまう。」
「だからといって、グレイスに手を出すのは許されない。」
「タンドゥーラ公爵令嬢が、あなたの竜の呪いを解いたのは分かっています。偉大な力だ。だが、この世に、竜の呪いに犯されている人がどれだけいますか?」
「何?」
「どんなに偉大な魔法を使えたとしても、それは殆ど必要ないでしょう。しかしフィーネ様の魔法は、戦いや魔獣に襲われて、手足を失った沢山の人達に必要とされている。治療出来る人数は少ないが、失う訳にはいかないのです。あなたもそれを分かっていたから、タンドゥーラ公爵令嬢と離婚し、フィーネ様を選んだのでしょう?」
「······。」
「フィーネ様は、ジャンやカルロを失い、絶望の中にいる。それを救い上げる事が出来るのは、ダリウス様、あなたからの愛しかないのです。フィーネ様はあなたに抱かれたがっている。妻にして欲しいと願っている。あなたと子供を作り、幸せな家庭を作りたいと願っている。本当に普通のささやかな願いです。それを叶えるだけで、多くの人がこれからも救われるのです。あなたはもう、タンドゥーラ公爵令嬢の元には戻れない。覚悟を決めて下さい!」
何てめちゃくちゃな理論だ。
このままだとフィーネは力を失うだろう。
だが、俺は·····。
「傍にいることは出来る。しかし、俺はフィーネを抱く事はないだろう。····抱けないんだ。恋愛の対象に見ることがどうしても出来ない。本当の夫になることは出来そうもない。」
「·····ならば、これを使って下さい。強い媚薬です。これなら気持ちがどうであれ、身体が求めるでしょう。」
「·····無理だ。」
「ならば、魔法をかけましょう。私の魔法は強くはないがあなたに幻覚を見せる位は出来る。」
「幻覚?」
「フィーネ様ではなく、タンドゥーラ公爵令嬢に見えるなら大丈夫でしょう?媚薬も飲めば間違いない。」
ダリウスはマルスから媚薬の入った小瓶を渡される。
「準備が出来たら声をかけて下さい。」
グレイスは生きているだろう。
しかし、グレイスを陥れた人間を俺は抱かねばならないのか?
そんなにフィーネを生かさねばならないのか?
ダリウスは悩みながらも軽く湯浴みをし、言われるがままフィーネの部屋の前に立っていた。
「ダリウス様、迷わないで下さい。私達は多くの人間を救う為に選択しただけです。」
選択か····。
俺はグレイスと幸せに余生を送るつもりだった。 俺の選択は正しいのだろうか。
ダリウスは媚薬を口にする。
「では、魔法をかけます。」
マルスはそう言うと、ダリウスに幻覚の魔法をかける。
「名前を呼ぶ時には注意して下さい。フィーネ様に幸せを。」
マルスはそう言って退いた。
部屋の扉を開ける。
フィーネは目が覚めたのか、ベッドの上で膝を抱えて泣いていた。
「フィーネ。」
そう呼ぶ。
次の瞬間視界が歪む。
そして····
ああ、何という事だ。
フィーネだった姿は、グレイスに変わっていた。
グレイス····グレイス····
グレイスは泣いている。
それだけで、胸が締め付けられる。
「泣かないでくれ····。」
そう言って涙を指で拭う。
目の前のグレイスは驚いた顔をしている。
そのまま吸い寄せられる様に口付けをし、それは深くなる。
一旦顔を離すと、蕩けた顔のグレイスがいた。
これはグレイスではない、フィーネだ。
そう思うも、欲情する。
そしてそのまま身体を押し倒した。
数ある作品の中から見つけて、読んで下さり有難うございます。
もし宜しければ、暇潰しに、本編完結済の「貴方のためにできること~ヒロインには負けません~
https://ncode.syosetu.com/n0868hi/
も読んで頂ければと思います。
番外編の投稿もしています。宜しくお願いします。




